“価格ではない価値”をどうつくるか──。
住宅業界が転換期を迎える今、工務店に求められるのは「魅力ある家づくり」。
2025年7月1日からライセンスが提供開始された提案型・高級注文住宅ブランド「HUIZEN」
地域に根ざした工務店が、ハウスメーカーに対抗し、シェアを奪う強力な「武器」となるこの住宅ブランドを全国に展開できることになった背景や想い、これからの工務店のあり方についてお届けします。
対談者:菱田工務店 代表取締役 菱田昌平

株式会社菱田工務店
代表取締役 菱田 昌平
1979年長野県坂城町出身。
小学校卒業後、中学に3カ月通い、不登校に。リンゴ農家、サッシ業者などを経て大工修行へ。26歳で独立し、2012年に菱田工務店を設立。会社経営のかたわら、大工アーティスト・Shohei Hishidaとして活動しており、「Forbes Japan カルチャープレナー30 2024」にも選出された。個人・ブランドを合わせたInstagramフォロワー数は50万人超。菱田工務店は、新築受注年間約30棟で、社員約50人。15人の社員大工を擁するものづくり集団で、墨付け・手刻みといった技術も織り交ぜた家づくりを展開。海外も含めて全国から、設計志望の若者が同社で働きたいと門を叩く。
対談者:Make House株式会社 代表取締役 眞木健一
Make House株式会社
代表取締役 眞木健一
1967年6月19日福岡県生まれ。
東京で不動産販売業を経験し、1990年に福岡にて注文住宅を中心としたMAKIHAUS(1,600棟以上の実績)を立ち上げる。
その後、MAKIHAUSで開発した住宅商品である「casa cube」を軸に、2007年に工務店ネットワークのcasa project株式会社を創業し、工務店様と共に商品住宅「casa」シリーズを全国展開。
2016年にMake House株式会社を設立し、住宅商品開発やコンサルティングを中心に、3次元設計の技術である「BIM 」を使用した木造住宅の設計手法を構築する。

HUIZEN(ハウゼン)とは?

菱田:HUIZEN(ハウゼン)ってなんぞやっていう話なんですけど、オランダ語で「家家」っていう家がたくさんつながってHUIZENっていう言葉なんですけど。
私としてやりたかったのは、ずっとオートクチュールのいわゆるものづくりを20年やってきた中で、私は木造の”人が暮らす”住宅に特化したものづくりをしたいとずっと思っていたので、やっぱりそういう案件をやればやるほどですね”暮らし”のパターンって決まってくるんですね。
今、特に物価も上がってきて、お客様のご予算からするとある程度パターンが決まってくるんですね。私の中でも決まってきてて、「オートクチュールで設計しますよ」って言いながら、自分の中ではいろんな型があって、そこからいろんなキャラクターがあってご提案していた時期もあるぐらいなんですね。
それをやった時に、だったらまずそれをご提案型ということで、自信を持って一つの形にしたのが僕の中のHUIZENという形です。ただ私としても、ものづくりがすごい好きなのでHUIZENはHUIZENでいろんなキャラクターと私のいわゆる建築の型があってですね、それとは別で違うShohei Hishidaというブランドで、もっともっといろんなことをトライしてそこからまた生まれたものをまたHUIZENにしていくっていう。
そんな自分自身も成長しながら皆様に届けるようなものの、いわゆる”型”ができればいいのかなということで、実は開発をして皆様に届けようとしているものになります。
HUIZEN(ハウゼン)は規格住宅ではない?

眞木:規格住宅ではないですね。それかといってお客さんの体のサイズから測る「フルオーダー」とも違う。やっぱりお客様は家づくりに対して「想い」がありますので、その「想い」は十分叶えつつ、「プロからの提案型」という形のものと「提案型注文住宅」と言うんでしょうか、そういう位置付けかなとも思っているのと。
私はですね、今回のHUIZENというのが工務店さんにとって戦う武器になるというか、ハウスメーカーの平均受注単価も4,000万〜5,000万ですよね。この4,000万〜5,000万のハウスメーカーというブランドに対抗できる唯一の武器かなと思っています。
私も比較的やっぱり2,000万前後とか、工務店さんが売りやすい住宅を企画してきましたが、「これだったら勝てる」というところがですね、菱田工務店さんが作られたこのHUIZENという住宅にあるんじゃないかなと思っています。
HUIZEN(ハウゼン)の魅力とは?

眞木:まず、素材の使い方ですね。やっぱりデザイン的な部分のプロポーションということもしっかり考えられてますし、あと”心地よさ”という空間構成ですね。ソファーに座った時、ダイニングテーブルに座った時に、「どういう暮らしをしてもらいたいか」という部分の高さだったり広さだったり、本当にこう「バランスいいな」ってすごく思います。決して”広ければいい”という問題ではなく、「心地よさを追求されてるな」ということは思いますね。
これは単純に平面図だけじゃわからないんですよ。平面図だけ見ても全然わからない。本当に暮らしてみないとわからない設計の概念がしっかりとあるというところですね。
サービスの内容は?

眞木:先ほど言ったように規格住宅ではありません。提案型注文住宅ということです。やっぱり設計のルール的なところは当然あるんですけども、お客様のご要望に合わせて間取りについてはご要望をお聞きします。
ここで我々Make Houseの役割とすればですね、設計のご支援ということでこの建物は先ほど言ったように平面図ではわかりづらいですね。これがリアルに再現できるのは、やっぱりBIMでしかないと思ってます。
BIMでこのHUIZENを設計することで、お客様も食い違いがないというか、リアルにコンセントの位置がわかったりとか、実際にウォークスルーでずっとぐるぐる見れるし、「こんなはずじゃなかった」ということを解決できるのは、このBIM3D設計だと思います。だからHUIZENの3D設計を受けて、デザイン監修は菱田さんにやっていただきます。それで設計の作業はMake Houseでやっていくと。そういう流れになります。
これはフランチャイズでもなんでもありません。やっぱりフランチャイズがブランドということになりますけども、今回は工務店さんがブランドになってもらいたいわけです。
HUIZENを通して工務店さんがブランドになってもらいたいと思いますので、なんかVCとかFCではなくですね、HUIZENのライセンスのご契約という形のものになります。それを導入いただいて、実際に菱田さんの家も見ていただき、職人さんの手仕事も見ていただき、研修というのも月1回きっちりやっていきながら、場合によってみれば職人さんをインターンシップ的なところも菱田さん考えていただいているので、そういったところでですねやっぱり全国で「工務店が作る家がブランドだ」というような、そういう世界を作っていきたいというところですね。
営業やブランディング支援も受けられる?
眞木:菱田工務店さんのコンテンツはすでに、インスタグラムで実証済みです。そういうコンテンツもある程度今回共有していきながら、菱田工務店さん筆頭に全国ブランドになっていければいいなというところですね。
だから工務店さんもゼロから始めるわけじゃなく、もうすでに菱田さんのところがファンを作っていただいているというところを考えていくとですね、どんだけマーケティングコストが安く集客ができるのかっていうことを考えていくとですね、本当に一緒にやっていきたいなと思ってますね。
菱田:実は今回私も眞木さんに初めてお会いした時に、”設計者と大工”みたいなすごい超簡単なカテゴリー分け方かなと思っていて、眞木さんたちのMake Houseさんチームが”売ること”ブランドマーケティングと設計というところを、プロフェッショナルとしてサービスしてくれるので、自分はですねまずやっぱりさっきの話であるHUIZENという世界観を私が生んでいるので、全てのデザイン監修とあとは作ることに対して、ちょっといろんなサービスを今実は考えています。
月の1回の講習とは別でですね、やっぱり今うちも大工が10人超えてくると、なかなか全員一同に集めて講習会がしづらいとか、新しいいわゆる施工の切り替えのときに、なかなか教育が難しかったりするのでそういう動画コンテンツを作ったり。あと特殊建材開発、床とか天井板とか外壁とか、あとキッチン周りなどの特殊建材開発もしたいと思っています。
あとさっきお話に出た教育なんですけど、うちインターンシップ制度があって、今海外のインターン生は3ヶ月からということで、常に事務所側は外国から2人きてるんです。今アメリカとフランスから来てるんですけど、そういうような制度を作って、大工側でも設計側でもとりあえず預かりますと。預かって私たちのものづくりの中で教育するということも始めたいなと思いますね。やっぱり一番大事なのは作る力をちゃんとどう教育していくかということがすごく大事なので、その辺は私もやりながらサービスを固めたいと思っています。
なのでまずは皆さんの問題をすぐ教えてもらいたいなとは思っていますね。
どのタイミングで設計を受ける?

眞木:基本設計のサポートとしてはプランを描く、そして外観デザインを考える、大体概算の目安がわかるという。基本設計の部分のサポートを行い、それで実際にお客様と請負契約を工務店さんが結んだら、我々の方で許容応力度計算、省エネ計算、実施図面でBIMで図面を書くと。そのBIMでお客様と工務店さんが打ち合わせをすればズレのない着工前に完全着工というものができるんじゃないかというところで、基本設計、実施設計のサポートをやらせていただくという流れです。
工務店がHUIZENを提供するときの価格帯は?

眞木:価格帯はやはり3,000万円台後半から始まると思いますね。いろいろな今回シリーズをご用意いただいておりますので、それによって多少価格は違うんですけども(※現在は4,000万円台〜で想定中)やっぱりある程度の敷地がないとですね、庭との一体感というものができませんので、東京23区のど真ん中のような狭い土地ではやっぱりHUIZENの魅力というのは実現できないのかなと思いますね。
どんな工務店が対象?

眞木:そうですねやはり「いい家を建てたい」と思っていらっしゃる工務店さんっていうことでしょうね。そこがやっぱり根底にないとですね、やっぱりできないのかなと思います。「いいものは作りたい」だけど口下手というような工務店さんって、私も接する機会が多くてですね、そういう方々は一緒にやっていただければいいなとは思ってますね。
菱田:なんか本当私は大きく2つかなと思ってて、1つは今の「元々作る力を持っている人」「HUIZEN絶対やった方がいいでしょ」という人ですね。その人にはぜひ入ってもらいたいと思います。
もう1つは、手仕事の可能性をちゃんと見出している経営者の方。そういう方もいらっしゃると思ってて、だぶんローコストのいわゆる大量生産みたいなところってもう絶対に出口がなくて、ハウスメーカーもいるので、たぶん違う道筋を描いた方が私としては楽しく経営できると思うんですね。たぶんその方が本質的だし、その辺のビジョンをちゃんと共有できる人、たぶんその2つが大きいんじゃないかなと思いますね。
HUIZENを検討される工務店さまへ

菱田:私が感じているのは、HUIZENって加入金と毎月の金額なんですけど、安い家を安い設計事務所に払うのとほぼ変わらないんですよ、加入金自体が。なのでShohei Hishidaという設計士にとりあえずプランをお願いしたと思って入ってくださいと思ってて、決して高くないんですね。
それ入ることで私もすごい色んな方に言われるんですけど、「菱田さん素晴らしいけどまあ僕たち作れないよね」とか、普通の工務店さんに作れないってすごい色んな方に言われるんですね。ただ私は100%作れると思ってて、なんでかと言うと私がいるから。私うちの会社で本当1年生の大工でも2年生の大工でもちゃんと担当して作れてるんでうね。なので100%作れるんですよ。
もし本当にやってみたいし、手仕事に可能性がある人は決して高くない金額だと思ってて、絶対入ってもらった方がいいです。
そこで私が、私実は決めてることあるんですけど、47(歳)になるので、もう1年後死ぬかもしれないんですよ。なので今ある私の情報を全開示するつもりなので、全開示します。ただ私毎年1日単位で成長するので、開示しても常に私新しい進化をしているので、常に新しいデータを皆さんに開示して、この私の今までのいわゆる建築作法、私に先生誰もいないので、私が今作ったものがいろんな意味で価値化されたんですね。それを皆さんに共有したいというのが、このHUIZENというプロジェクトなので、本当にご興味あればどこかの設計事務所にちょっと1プラン頼んだと思って、HUIZENに加入しちゃった方がいいです。
なんでかというと私がこのHUIZENというものを、どんどん良いブランドにしまくっていくので、ということは皆さんにお伝えしたいなと思いますね。
HISHIDAブランドの建築の価値

菱田:多分本当にうちの建築は、10代の子から20代、30代誰が見ても、美しいと思ってもらえるし憧れてくれるんですよね。うちだけ取れば誰か溢れちゃうんですよ。断ってるくらいなんですね。なんでそんなことが起こっているのかなと思って自分でも考えるんですけど、単純に作っているものがそうさせているだけだと思っていて、私が話したりとか、例えば大工に興味ある子を私が足止めして「いや〜大工はね」ってなんて説明してもないんですよ。
単純に今世の中にでているほとんどインスタなんですけど、菱田工務店が作る世界線にたぶん皆さん憧れを持ってくれてる。新しい価値をたぶん見出してくれてて、それを目標にしてくれてるんじゃないかなとすごい感じますね。実際HUIZENはもう私が思うに、いきなりHUIZEN全棟なんて無理なので、年間1棟でもいいからやってもらいたいです。1棟が2棟、2棟が3棟、たぶんそれが絶対的な価値があるので、本当に騙されたと思って作ってもらいたいんですよ。たぶんそうしないと本当に地域工務店の役割がないと思います。それってやり続ければ絶対に上手になるので、そういう部署が1個でもあればそこに憧れて働きたいっていう子も絶対くるので、やってないと何も始まらないんですよね。
私自身も常に成長し続けたいと思っているので、私が新しくトライしてそれこそ失敗して学んだことのいわゆるアウトプット先がHUIZENなので、私自身の成長と一緒にHUIZENもずっと成長し続けるブランドに私がしたいと思っているので、そういう意味ではまずみんなでHUIZENというものを手に取って、ものづくりにもう1回足を止めて再トライしてもらいたい。たぶんその武器がないと生きていけない時代が、そのうち来ちゃうと思うんですね。菱田工務店がその価値を今確認できているので、それがインスタの数だったりとか売上とか人の問題。今業界の問題はほとんどうちの問題ではないんですね。それが1つの答えだと思っているので、そういう意味でもぜひHUIZENというもので、手仕事とか作ることの楽しみを、まずみんなで体感してもらいたいなっていうそんな思いはあります。