収納の失敗がない家づくり|住宅収納スペシャリスト大熊千賀が教える「提案力を高める収納アイデア」

「収納」は家づくりの中で軽視されてしまうことも多い要素ですが、実は住まいの満足度を大きく左右します。

「新しい家に引っ越したのに、なぜ片付かないのだろう?」と悩む人は非常に多く、その原因は設計段階での収納計画が曖昧だからです。

設計段階での収納計画を軽視した結果、「引っ越して3年経つのに、未だに収納場所が決まらずモノが散乱している」と嘆くユーザーも少なくありません。

そこで今回の記事では、住宅収納スペシャリストである私が、設計者や営業担当者が今すぐ実践できる収納提案に関するマル秘ノウハウをご紹介します。

ぜひ最後までチェックしてみてください。

この記事でわかること
  • 【収納の失敗あるある】お客様の不満はこうして生まれる
  • 【収納提案の極意】動線×モノ起点で考える「収納プランニング」
  • 【実践テクニック】お客様にウケる!収納アイデア6選
目次

住宅収納スペシャリスト大熊千賀の経歴・実績

経歴・実績など

大熊千賀(おおくまちか) 住宅収納スペシャリスト 暮らしstyle代表

https://kurashi-style.net/

kurashi_style

経歴と実績
・暮らしStyle 代表
・住宅収納スペシャリスト認定講師
・整理収納アドバイザー1級認定講師
(全国20万⼈以上のいる整理収納アドバイザー取得者の中で40名だけが持つ1級の認定講師)

セミナー経験
・大手ハウスメーカーのセミナー研修講師(年間最多400回以上)
・小学校講演講師
・NPO法人コミュニティースクールのセミナー講師など

SNSでの影響力
・Instagramのフォロワー数:約1万人(2025年5月時点)

メディア出演歴

・TBS「あさチャン」
・フジTV「ノンストップ」
・TV東京「なないろ日和」
・日本TV「ヒルナンデス」
・日本放送「サタデープラス」 他

現在の活動
・暮らしStyleの運営
・企業におけるセミナー講師、研修講師としての活動
・個人コンサルティング
・整理収納サポート
・モデルハウス・ショールームの収納監修
・新築監修

書籍
・「笑顔で片づく整理術」(BLA出版)

【収納の失敗あるある】お客様の不満はこうして生まれる

インスタ映えを意識した“見た目だけ収納”は映像では美しくても、実生活では動線と使い勝手を損ねることがあります。

結果として「しまうのが面倒→出しっぱなし→散らかる」という悪循環に陥りがちです。

さらに、家具・家電のサイズを考慮せずに決めた収納スペースは「置けない」「扉が干渉して取り出せない」といった不満を招きます。

また、図面上では充分に思えた容量が、引っ越し後に初めて「高さが合わない」「ハンガーパイプが低すぎる」と気づくケースも少なくありません。

これらの失敗は、設計段階で暮らし方とモノの量を具体的にヒアリングできていないことが主な原因です。

【収納提案の極意】動線×モノ起点で考える「収納プランニング」

設計者は、収納=「住宅性能の一部」という意識を持つことが大切です。

以下の項目では、動線×モノ起点で考える「収納プランニング」について解説します。

生活行為に合わせた収納

まずは家族が一日をどう過ごすかを丁寧に洗い出し、起床から就寝までの行動を分解します。

朝の支度や帰宅後の着替え、趣味の時間など、それぞれの場面で「何を手に取り、どこへ戻すとストレスがないか」を具体化し、その結果を収納位置や高さ、ドアの開閉方法に反映させます。

実際の動きをシミュレーションしながら計画すれば、片付けが自然に習慣化し、家事効率と快適さが大幅に向上します。

さらに週末と平日の違い、来客時の振る舞いまで考慮することで、プランはよりリアルになり、住み手の行動が収納を導く住まいに仕上がるでしょう。

モノの定位置化

「探し物が見つからない」という日常的な課題は、住宅の快適性を著しく損なう要因の1つです。

この解決策が「モノの定位置化」で、すなわち全ての所有物に明確な収納場所を設定することです。

各アイテムの住所が家族間で共有されれば、探し物の時間は削減され、使用後の片付けも習慣化しやすくなります。

顧客の「スッキリした住空間を望む」という要望に対し、この「モノの定位置化」を支援する収納計画こそが具体的な解決策となります。

設計段階から、一つひとつのモノの収納場所を意識したプランニングを心がけましょう。

使用頻度と動線に基づいた配置

収納計画の質を高めるために、モノの「使用頻度」と居住者の「生活動線」を総合的に考慮した配置が求められます。

日常的に使用するアイテムは、主要動線上に位置し、かつ容易にアクセス可能な箇所に配置するのがセオリーです。

一方、季節用品や備蓄品など使用頻度の低いモノは、日常動線を妨げないデッドスペースや高所などを活用します。

この使用頻度に応じたゾーニングにより、収納効率と生活動線の最適化を図り、ストレスフリーな居住空間を提供できるようになるでしょう。

適正量の設計

「収納は広いほど安心」という発想は、余計な物を呼び込み管理を複雑にしてしまいます。

まず家族の所有物を種類ごとに洗い出し、将来の増減を含めたボリュームを見積もったうえで、容量の八分目を目標に設計しましょう。

余白があれば出し入れのストレスが軽減し、ライフスタイルが変わっても簡単に再配置できます。

量を絞ることで収納部材や金物の質を高める余裕が生まれ、空間価値と満足度が同時に向上します。

エコやサステナブルの観点でも、無駄を持たない暮らしは時代のニーズに合致するでしょう。

見た目と使いやすさの両立

収納は「隠すか飾るか」の二択ではありません。

まず使いやすさを優先し、機能を損なわない範囲で素材や色彩、照明を整えると美観が際立ちます。

たとえば、扉付き収納でも頻繁に使う部分だけはオープン棚とし、視線の抜けと時短を両立させることが重要です。

引き出し内部には仕切りを設け、開けても乱れない状態を保ち、面材や取っ手をインテリアと統一すれば生活感を抑えやすくなります。

扱いやすさとデザイン性を同時に満たした収納は、住む人の愛着や来客への印象を高めやすくなるでしょう。

【実践テクニック】お客様にウケる!収納アイデア6選

ここからは、実際にお客様から評価の高い具体的な収納アイデアを紹介します。

「ランクロ」:ストレスゼロのランドリークローゼット

洗濯動線の劇的な効率化を実現するのが「ランクロ(ランドリークローゼット)」です。

「洗う→干す→畳む→しまう」という一連の作業が一箇所で完結するため、家事負担を大幅に軽減できます。

ランクロは、特に共働き世帯や子育て中のファミリーから高い支持を得ています。

提案時のポイントは、洗濯機置き場、室内干しスペース、アイロンや作業ができるカウンター、そして家族の衣類を収納するクローゼットをどう配置するか、同じように換気計画も重要です。

この提案は、お客様の多忙な日常に寄り添う、説得力のある付加価値となるでしょう。

WICの落とし穴と成功例

人気の高いウォークインクローゼット(WIC)ですが、計画次第では「ただ広いだけの物置」になりかねない落とし穴も存在します。

成功のポイントは、顧客の持ち物量と種類を正確に把握し、それに合わせた内部造作を提案すること。

例えば、ハンガーパイプの高さや棚の奥行き、引き出しの数などを最適化するだけで、収納効率は格段に向上します。

また、通路幅の確保や換気計画も重要です。

ただ広くするのではなく、具体的な収納イメージを顧客と共有し、「本当に使えるWIC」を実現することで、顧客側は大きな満足感を得やすくなるでしょう。

「スペパ」でポールの高さを最適化


「スペパ(スペースパフォーマンス)」とは、限られた空間をいかに効率よく活用するかという意味をあらわす造語です。

特にクローゼット内部のハンガーポールの高さ設定は、このスペパを大きく左右するポイント。

例えば、ポールを上下2段に設置すれば収納量は約2倍に、ロングコート用とシャツ・ジャケット用で高さを変えれば無駄な空間が生まれません。

顧客の身長や所有する衣類の種類に合わせて、ポールの高さをカスタマイズ提案することで、使いやすさを実感していただけます。

オープン&クローズなワークスペース

近年の働き方の変化に伴い、自宅に快適なワークスペースを求める顧客が増えています。

リビングの一角や寝室などに設けるワークスペースは、その設計が重要です。

常にオープンな空間は家族との繋がりを感じやすい一方、集中したい時には視線を遮りたいというニーズもあります。

そこで有効なのが、ロールスクリーンや引き戸、デザイン性の高いパーテーションなどを活用し、必要に応じて「オープン」と「クローズ」を切り替えられる提案です。

生活感と仕事モードのメリハリをつけられるこの工夫は、在宅ワークの質を高めやすく、顧客に対して高い満足度を与えられるようになります。

家族がつながる伝言ボード


収納はモノをしまうだけでなく、家族のコミュニケーションを円滑にするツールにもなり得ます。

キッチン横やリビングの一角など、家族全員の目に触れやすい場所に「伝言ボード」を設置するアイデアは、手軽ながらも効果のある提案です。

学校のプリント、地域の回覧板、家族へのメモなどを集約することで、情報共有がスムーズになります。

伝言ボードは、マグネットが付くホーローパネルやコルクボード、チョークで書ける黒板塗装など、素材やデザインも豊富。

家族のスケジュール管理、コミュニケーションの中間地点として機能するこのスペースは、暮らしに温かさをもたらすでしょう。

趣味や記念を飾る“笑顔のポイント収納”

家は、日々の暮らしを支える機能性だけでなく、住まう人の「好き」や「大切」を表現する場所でもあります。

そこで提案したいのが、趣味のコレクション、子供の作品、家族の旅行写真といった、見るたびに笑顔になれるモノを飾るための「ポイント収納」です。

リビングの飾り棚、階段の壁面などを活用し、スポットライトで演出するのも効果的です。

これらは単なる収納ではなく、家族の思い出や個性を彩るディスプレイスペースとなります。

機能一辺倒ではない、こうした情緒的な価値を提供する提案は、顧客の心に深く響くでしょう。

設計提案に活かす!収納アイデア導入の進め方

収納アイデア導入の進め方として、以下を解説します。

あくまでも一例となるので、自社や顧客の状況と照らし合わせた上でヒントにしてみてください。

ヒアリング時に聞くべき質問は複数ある

ヒアリング時に聞くべき質問項目として、以下が挙げられるでしょう。

質問項目 質問意図 得られるヒントの例
1日の家事ルーティン 動線の優先順位を把握 洗濯・調理・片付けの集中ポイント
よく使う家電・ツール 収納寸法と電源位置を確定 炊飯器・掃除機・アイロンなど
衣類の所有量と増減予測 適正量とポール高さを設定 シーズンオフ衣類の保管方法
趣味・コレクション “見せる収納”の要否を判断 ギター、フィギュア、本など
片付けが続かない理由 失敗要因の特定 置き場所不足、定位置不明など
将来の家族構成変化 可変性の余地を把握 子ども独立後の用途転換案

あくまでも一例ですが、ヒアリング時の参考にしてみてください。

ライフスタイル別収納パターンの紹介

ライフスタイル別の収納パターンとして、以下の例をご紹介します。

ライフスタイル 特徴 推奨プラン
共働き子育て世帯 家事時間が深夜・早朝に集中 「ランクロ」+通園グッズ専用棚
単身テレワーカー PC周辺機器が多い/来客は少ない セミオープン書斎+配線隠しボード
趣味優先カップル 趣味に使う道具が大型・多ジャンル 天井までの可動棚+ガレージ収納
シニア夫婦 体力が低下・医療品が増えている 腰高引き出し+手すり一体型収納
ペット同居家庭 消耗品のストックが多い 玄関横パントリー+脱臭機内蔵棚

こちらもあくまでも一例となりますので、顧客の状況、自社データなどに照らし合わせてみてください。

収納プランナーとの連携で提案の質が変わる

設計者だけで収納を完結させようとすると、動線解析やモノ量の把握に時間を取られがちです。

そこで専門の収納プランナーと早期に連携し、ヒアリング同席やモノ量測定を任せれば、図面には落とし込みづらい生活細部まで可視化できます。

プランナーが提示する具体的寸法や、収納部材の最新トレンドを設計側が図面に反映することで、提案は一段と説得力を増し、成約率の向上にもつながりやすくなるでしょう。

まとめ

収納提案がしっかりと設計に組み込まれた住宅は、お客様の満足度が高くなり、成約率や紹介率の向上にもつながりやすくなります。

収納は、ただ「しまえる場所をつくる」だけでなく、暮らしやすさ・片付けやすさ・顧客満足のすべてを左右する設計の重要要素です。

図面に描かれる寸法の奥にある、「使い方」や「暮らし方」まで想定できるかどうかが、提案力の差につながります。


お客様の期待を超える住まいづくりのために、収納を含めた設計全体の最適化に、ぜひ今回のノウハウをお役立てください。

Make Houseからのお知らせ

収納は住まいの使いやすさを左右する重要な要素でありながら、設計段階で軽視されがちです。その結果、入居後の満足度低下やクレームの原因になるケースも少なくありません。

特に動線やモノの量、使用頻度を考慮せずに計画された収納は、「片付かない家」の元凶になりやすく、提案力の差が顧客の印象に直結します。

そこで、収納を含めた設計の考え方から、動線設計・ヒアリングの視点・ゾーニングの基本までを体系化した実践的ノウハウ資料をご用意しました。

お客様に「ここまで考えてくれるのか」と思ってもらえる提案のために、ぜひご活用ください。

以下のリンクからダウンロードが可能なので、ぜひ参考にしてみてください。

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