派手な車には乗るべからず

工務店経営において、利益が出始めた頃が一番危ない。 なぜなら、経営者の「見栄」がでてくるからです。その象徴が「車」です。

今回のテーマは、経営者の品格と信用に関わる「派手な車問題」についてです。

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お客様は、社長の「人格」を見ている

会社が儲かると、社長はなぜか高級車を買いたがります。経費で落ちるから、節税になるから……もっともらしい理由をつけますが、本音はただの自己満足です。

しかし、冷静になって考えてみてください。 お客様にとって、家づくりは「一生に一度の命がけの買い物」です。35年のローンを背負い、清水の舞台から飛び降りる覚悟で契約書に判を押すのです。 その打ち合わせに、社長が真っ赤なスポーツカーや、威圧的な高級SUVで乗りつけたら、お客様はどう思うでしょうか?

「あぁ、私たちが必死で支払う建築費の一部が、この社長のオモチャに消えているのか」

そう思われた瞬間、築き上げた信頼は崩れ去ります。 また、協力業者や職人さんに対しても同様です。「少しでもコストを抑えたい、協力してくれ」と値交渉(指値)をした時、相手があなたの後ろにある高級車を見たらどう感じるか。 「自分はいい車に乗っておいて、俺たちには値下げかよ」 そこで生まれるのは「妬み・やっかみ」だけです。求心力は確実に失われます。

社長が同じ見栄でも「いい家」に住むのは良いと思います。「私の自宅はこれです」と見せれば、それはモデルルームであり、技術力の証明になります。しかし、派手な車は工務店の仕事において、何の証明にもなりません。ただの「無駄遣い」の証明です。

【実録】イタリア車を、こっそり遠くに停めたあの日

かく言う私も、実は大の車好きです。 まだ若く、業績が伸びていた頃、その誘惑に勝てず、イタリア製の高級車を買ってしまったことがあります。 会社の経費で購入しましたが、当然、利益は圧迫されました。

納車された時は有頂天でした。しかし、すぐに「これはマズイ」と気づくことになります。 お客様の地鎮祭や上棟式に行く時、私はその自慢の愛車を、現場からあえて遠く離れたコインパーキングに停め、そこから歩いて現場に向かっていました。 お客様に見つかるのが怖かったからです。職人さんに「儲かってますね」と皮肉を言われるのが嫌だったからです。

なんて情けない話でしょうか。 高い金を出して買ったのに、コソコソ隠れて乗らなければならない。これほどバカげたことはありません。 その時、痛感しました。「仕事で堂々と乗っていけない車など、経営者には必要ない」と。

これまで多くの工務店を見てきましたが、急成長した会社の社長が派手な車に乗り始めたら、それは危険なサインです。 私の経験則ですが、「急成長して派手な車に乗る会社」の倒産確率は、極めて高い。 車への散財は、経営の規律が緩み始めた最初の「綻び」なのです。

車ではなく、「信用」に乗れ

これから伸びていく工務店経営者の皆さん。 もし利益が出たなら、車ではなく、次の「事業」や「社員」、そして「お客様への還元」に投資してください。

どうしても良い車に乗りたければ、引退してから個人のお金で乗ればいい。 現役の経営者である以上、乗るべきは高級車ではなく、地域の「信用」という名の御輿(みこし)です。

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