「御社の利益率は何%ですか?」 経営者同士で集まると、よくこんな会話が聞こえてきます。
一般的に、小規模工務店なら15%、通常は25〜30%が適正ラインと言われています(大手ハウスメーカーになればグループ全体で50%近い場合もありますが、あれは別世界の話です)。
多くの経営者は、この「%(パーセンテージ)」を1%でも上げようと必死になります。 しかし、声を大にして言いたい。 「利益率」を追い求めるのはやめるべきと
今回のテーマは、経営の数字のトリック、「利益率と時間の関係」についてです。
利益率アップは、お客様の「資産を減らすこと」である
なぜ、利益率をむやみに上げてはいけないのか。 それは、工務店の利益とは、お客様にとっては「経費」であり、過度な利益追求は「お客様の資産価値を減らすこと」に直結するからです。
建設業法第20条では、建設工事の請負契約を締結するに際し、建設業者が見積りを行う際に工事内容に応じて「材料費、労務費、その他の経費」の内容を明らかにするよう努めることが求められています。 私たちがいただく「粗利」は、お客様から見れば「経費」です。
もし、2500万円の家で、あなたが利益率を不当に高く設定すれば、その分、建物本体にかけられる材料費や職人さんの手間賃は減ります。つまり、お客様が手に入れる「家の実質的な価値(資産)」が目減りするのです。
付加価値をつけて高く売る、というのは一般的なビジネスでは正解かもしれません。しかし、お客様の「一生の資産」を預かる住宅事業において、中身を削って自社の実入りだけを増やすやり方は、誠実とは言えません。お客様に胸を張って説明できる適正利益(25〜30%)を守るべきです。
【実録】「10ヶ月」を「5ヶ月」にする魔法
では、適正な利益率を守ったまま、どうやって会社を成長させるのか。 ここで重要になるのが、「1ヶ月あたりの利益額」という考え方です。
例えば、2500万円の請負契約で、利益率が25%だとします。 粗利額は 625万円 です。
・A社(完全注文住宅)の場合: お客様の要望を一から聞き、設計変更を繰り返し、着工まで時間がかかる。初回面談から引き渡しまで「10ヶ月」かかったとします。
625万円 ÷ 10ヶ月 = 利益額 62.5万円/月
・B社(商品住宅)の場合: プロが考え抜いた規格住宅(商品)を提案し、打ち合わせを効率化。着工まで2ヶ月、工期3ヶ月。初回面談から引き渡しまで「5ヶ月」で完工したとします。
625万円 ÷ 5ヶ月 = 利益額 125万円/月
お分かりでしょうか。 お客様からいただく金額(2500万円)も、利益率(25%)も全く同じです。 しかし、期間を半分にするだけで、会社としての生産性は2倍になるのです。
「注文住宅=時間がかかる」という思い込みを捨てるべき
「注文住宅は打ち合わせに時間がかかって当たり前」 そう思い込んでいる経営者は多いです。
私が「プロが考えた商品住宅」の開発に力を入れた理由はここにあります。 ゼロから素人であるお客様と迷いながら作るのではなく、プロとして「これが正解です」という良質な商品を提案する。それによって、打ち合わせなどの「着工までのリードタイム」を劇的に短縮する。
工期が変わらないのであれば、短縮できるのは「着工までの時間」しかありません。 時間を短縮することは、お客様への手抜きではありません。むしろ、お客様を迷わせず、早く理想の暮らしをスタートさせてあげるというサービスであり、かつ、お客様の資産(原価)を守りながら工務店もしっかり儲かる、唯一の解決策なのです。
利益の「率」ではなく、利益を生み出す「スピード(時間)」に目を向けてください。 そこには、まだ誰も手をつけていない莫大な利益が眠っています。
格言
利益率で稼ごうとするな。 生産性を高め1ヶ月あたりの利益額を最大化。
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