「他社との差別化はどうすればいいですか?」
コンサルティングをしていると、必ずと言っていいほどこの質問を受けます。 世のマーケティング本には「ブルーオーシャン(競合のいない海)を目指せ」と書いてあるからです。
しかし、地域密着の工務店経営において、奇をてらった差別化は自殺行為です。
今回はあえてマーケティングの定説に逆らう「徹底的な模倣(コバンザメ)戦略」についてお話しします。
豚骨ラーメンの行列店、その隣に店を出すなら?

わかりやすい例え話をしましょう。 ある場所に、めちゃくちゃ流行っている「豚骨ラーメン屋」があるとします。毎日大行列です。 さて、あなたがそのすぐ隣に飲食店を出すとしたら、何屋をやりますか?
「差別化しなきゃいけないから、味噌ラーメン?」 「いや、ラーメンは競合するから、カレー屋?」
違います。「豚骨ラーメン屋」を出すのが正解です。
なぜか。そこにはすでに「豚骨ラーメンを食べたい」と思っている人間が山ほど集まっているからです。 その巨大な需要の流れに乗っかることこそが、最も手っ取り早く、広告費をかけずに集客する方法です。 工務店経営もこれと同じです。
住宅業界において、この「行列のできるラーメン屋」にあたるのが、例えば一条工務店さんのような大手ハウスメーカーです。 彼らは莫大な広告宣伝費を使って、「高気密・高断熱」「全館床暖房」といった性能の重要性を、一般消費者に教育してくれています。
地域を絞って戦うなら、この波に乗らない手はありません。 お客様が「一条さんのような性能の家がいい」と思っているなら、自社のラインナップに「一条さん並みの性能の商品」を用意しておくのです。
「ウチは性能じゃなくてデザインで売るから」と、全く違う土俵(カレー屋)に行こうとすると、比較検討すらされません。 「競合にならない」というのは、誇るべきことではなく、選択肢に入っていない(無視されている)のと同じことなのです。
お客様が比較検討する土俵に上がり、スペックは同等にしておく。 その上で、
「大手は営業マンが転勤してしまうけれど、ウチは地元の社長である私が一生面倒を見ますよ」
「同等の性能で、オプションまで含めればウチの方がこれだけ安いですよ」
と、最後のひと押しで勝負する。 これが、地域工務店の賢い戦い方です。
【実録】「デザイン特化」で差別化しようとして撤退した話
かつて私が福岡で工務店経営をやっていた頃は、まさにこの「全方位戦略」でした。 和風も、洋風も、モダンもやる。あらゆるニーズに応えられる商品バリエーションを持っていたからこそ、地域のシェアを独占できていました。
しかし、Vol.1でもお話しした通り、福岡市内に拠点を移した際、私は過ちを犯しました。 大都市には競合が多い。だから差別化しなければと焦り、「デザイン特化」に舵を切ったのです。
結果、どうなったか。 「デザインにこだわりたい」というニッチな層を探すために、莫大な広告費がかかりました。 さらに、ターゲットが点在しているため施工範囲が広がり、移動コストもかさみました。 地元の豚骨ラーメン好き(マジョリティ)を無視して、遠くから来る激辛カレー好き(ニッチ層)を探し回るようなことをしてしまったのです。 結果、利益が出ずに撤退することになりました。
地域密着でやるなら、地域で売れている会社の商品に対抗できるラインナップを持つべきです。
「なんでもやります」を「メニュー化」せよ

ただし、一つだけ注意点があります。 単に口頭で「なんでもできますよ」と言うのは、ただの御用聞きです。それではプロとして信頼されません。
重要なのは、「言語化」と「メニュー化」です。 「高性能住宅プラン」「南欧風プラン」「和モダン・プラン」……。 あたかも専門店のような顔をして、しっかりとメニュー(商品)としてラインナップを揃えておくこと。 そうすれば、どんなお客様が来ても「それ、ウチの得意分野です」と胸を張って言えます。
差別化なんて考えなくていい。 売れているものを、売れている売り方で、メニューに加える。 それが、地域で勝ち残るための鉄則です。
格言
差別化するな、同質化せよ。 『なんでもやります』を『メニュー化』した会社が、地域を制す。
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