ナフサショックはいつまで続く?なぜ今、工務店に影響を与えているのか

2026年2月のホルムズ海峡封鎖を契機に、住宅建材の値上げ・受注制限・出荷停止が同時多発的に起きています。

断熱材は約40〜50%、塗料は最大約80%の値上げが通告され、ユニットバスの納期遅延まで現実のものとなりました。

「いつまで続くのか」という多くの工務店が気になるこの問いに対して、現時点での正直な答えは「ホルムズ海峡が平時の通航水準に戻るまで」です。

終息の見通しは立たず、待てば解決する性質の問題でもありません。

本記事では、ナフサショックの構造と最新の影響状況を整理したうえで、以下の内容を解説します。

ナフサショックについて危機感を抱いている、工務店経営者、担当者の方に読んでいただきたい内容です。

【この記事でわかること】
・ナフサと住宅建材の関係をおさらい
・ナフサショックはいつまで続くのか?現時点での見通し
・工務店が直面する建材への具体的影響
・工務店が今すぐとるべき5つの対策

監修者

眞木 健一

Make House株式会社 代表取締役

福岡にて1600棟以上の注文住宅の実績。また、casa projectを創業し『casa cube』をはじめとした企画住宅を全国に展開。
その後2社を売却し2016年、技術ある職人や工務店の設計サポートを行うMake House株式会社を立ち上げる。

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目次

ナフサと住宅建材の関係をおさらい

ナフサは原油精製で得られる石油化学製品の基礎原料で、断熱材・塗料・配管・接着剤・シーリング材など住宅建材のほぼ全域に関わる素材です。

「木や鉄だけで家はできている」というイメージとは裏腹に、見えない部分のほぼすべてがナフサ由来の素材で構成されていると考えてよいでしょう。

ナフサが不足すると、特定の建材だけでなく複数カテゴリの建材が同時多発的に影響を受ける構造になっています。

ウッドショックが「木材」という一素材の問題だったのに対し、ナフサショックは住宅1棟を構成する素材の川上を丸ごと直撃する点が根本的に異なります。

この構造を把握していない工務店ほど、メーカーからの値上げ通達を受けた際に後手に回り、経営的なダメージを受けやすくなります。

2026年2月28日を境に何が起きたか

2026年2月28日のイスラエル・アメリカによるイラン攻撃を受け、イランがホルムズ海峡を事実上封鎖したことが今回のナフサショックの起点です。

日本の原油輸入の約90%はホルムズ海峡経由のルートに依存しており、この封鎖が直接ナフサ供給の急減につながりました。

3月下旬から建材メーカーによる値上げ・受注制限・出荷停止のアナウンスが連日相次ぎ、現場への影響は急速に拡大しています。

ナフサは国家備蓄の対象外で民間在庫は約20日分しかなく、原油の230日備蓄とは違い、供給途絶への耐性が著しく低い状況です。

つまりこのショックは「値段が上がる問題」ではなく、「モノが物理的に手に入らなくなる問題」としてフェーズが移行しつつあります。

ナフサショックはいつまで続くのか?現時点での見通し

ナフサショックは短期目線では少なくとも2026年内、もしくはそれ以上に長期化する可能性が高いと見られています。

実際の詳細について、詳しく見ていきましょう。

政府の対応とこれから

高市首相は2026年4月5日に、中東以外からの輸入拡大によってナフサ由来化学製品の在庫期間は半年以上に延びるとの見通しを示しました。

一方で報道で「今の状況が続けば6月には機能不全に陥る」と警告しており、政府発表との間で見ている地点が違います。

政府が示す「足りている」は総量の話であり、川上のナフサから建材ができるまでの「川中・川下の目詰まり」は解消されていません。

政府は2026年3月に赤沢経産相を重要物資安定確保担当相に任命しましたが、住宅業界は医療など優先度の高い分野より後回しにされる構造になっています。

つまり「政府が解決してくれる」待ちの姿勢は現実的でなく、工務店は自社での建材調達・契約対応を先行して進めるしかない状況です。

ホルムズ海峡問題が解決しない限り続く構造的リスク

ホルムズ海峡は停戦後も平時の1割未満の通航水準にとどまっており、在庫が時間を稼いでいるだけでルートが戻らない限り安心にはなりません。

旭化成の社長は「ナフサ調達は6月中旬〜下旬まで一定の見通しが立った」と述べており、夏以降の見通しは明言されていない状況です。

アジア全体の輸入量に相当する月間約3,500万バレルのナフサが中東から届きにくい状態が続いており、代替調達では量的に追いつかない実態があります。

2026年内は建材の供給不足と価格の高止まりがさらに深刻化すると予測されており、終息の時期を具体的に示せる材料は現時点でありません。

「いつまで」の答えは「ホルムズ海峡が平時の通航水準に戻り、サプライチェーン全体の目詰まりが解消されるまで」であり、それがいつかは中東の情勢次第です。

ウッドショックとナフサショックの決定的な違い

ウッドショックは木材という特定素材の問題だったため、他建材で代替したり仕様変更でしのいだりする余地がありました。

今回のナフサショックは断熱材・塗料・配管・床材・シーリング材など複数カテゴリが同時多発的に影響を受けており、代替策を立てにくい構造になっています。

値上げ幅も次元が違い、断熱材40〜50%・塗料最大約80%と、ウッドショック時の木材値上がりを大幅に超えるカテゴリが存在します。

住宅設備(ユニットバス・システムキッチン等)の受注停止まで始まっており、「値上がり」フェーズを超えて「完工不能」リスクが現実化しています。

ウッドショックを乗り越えたという感覚で対応すると規模の違いに足をすくわれかねず、今回はそのくらい次元の異なる問題という認識が必要です。

過去のウッドショックに関しては、以下の記事で解説しています。

ナフサショックによって工務店が直面する建材への具体的影響【2026年最新】

工務店が直面する建材への具体的影響について、カテゴリごとに解説します。

断熱材

カネカ「カネライトフォーム」は2026年4月出荷分から約40%値上げ、デュポン・スタイロ「スタイロフォーム」は5月出荷分から約40%値上げを発表しています。

旭化成建材「ネオマフォーム」は5月7日出荷分から概ね約20%の特別調整金を上乗せすると公表しており、品目によっては受注制限・生産停止も続いています。

ZEHや省エネ義務化への対応でポリスチレン系・ウレタン系断熱材の使用量は増えており、値上がりをそのまま吸収するのは構造的に難しい状況です。

省エネ性能基準を満たしながら代替素材へ切り替えるには技術的な確認が必要で、安易な仕様変更はトラブルの種になります。

断熱材の価格改定は今後も続く可能性が高く、見積り時点と着工時点の価格差をどう扱うか、今のうちに契約条件として整理しておく必要があります。

塗料・シンナー

2026年3月、塗料業界大手がシンナー製品全般の最大約75%値上げを発表したのを皮切りに、各社が相次いで記録的な価格改定を実施しました。

塗装工事1件あたりで試算すると塗料・シンナーだけで25万円前後のコスト増が発生するケースがあり、工事費全体で約5〜8%程度の増額になります。

塗料の原料はほぼ全量ナフサ由来であるため代替調達の選択肢が少なく、値上げを断れば仕入れができない構造になっています。

この幅の値上げは従来の見積りで想定していた塗装工事の粗利を一瞬で消し飛ばす規模であり、吸収できる体力のない工務店ほど経営への打撃が大きくなります。

施主説明なしにこのコスト増を無視して契約すると、現場品質の低下や工事後のトラブルに直結するため、見積り段階での明示が不可欠です。

住宅設備

TOTOは一時ユニットバス・システムバスの新規受注を停止し、2026年4月20日から段階的再開の方向を示しましたが、納期遅延と受注商品の限定は残る見通しです。

クリナップは4月15日からシステムバスルーム全般の新規受注を停止、ハウステックは納期回答自体を停止しており、現時点でも混乱が続いています。

設備本体だけでなく、断熱材・下地材・接着剤・物流費など周辺コストも同時に上昇しており、「設備が入ってもコストが合わない」という事態も起こりうる状況です。

お風呂・トイレが入らない状態では家が完成しないため、「価格が上がる」問題から「着工してもいつ完工できるかわからない」問題に変わりました。

着工前に設備メーカーの受注状況と納期を確認しないまま工程を組むのは今や経営リスクであり、メーカーとの情報連絡を密にする体制が必要です。

配管・接着剤・防水材

配管材(塩ビ管など)・接着剤・防水テープ・ルーフィングはいずれもナフサ由来の素材で、受注制限・出荷停止・納期未定が続出しています。

これらは住宅の「見えない部分」に使われるため施主には伝わりにくいですが、不足すれば工事そのものが止まる根幹部材です。

塗料用シンナーと同様に「値上げで済んでいるうちはまし」という状況であり、受注停止・生産停止へ移行しているカテゴリが増えています。

問屋から「今後の商品供給が不可能になる可能性がある」という通達が届き始めているケースもあり、現場の調達環境は急速に悪化しています。

「必要になったら発注する」という従来の調達モデルはすでに機能しなくなっており、使用予定の建材を3カ月前から確保する発想への転換が急務です。

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工務店が今すぐとるべき5つのナフサショック対策

工務店が今すぐとるべき5つの対策として、以下を挙げました。

① 建材の早期確保——3カ月前発注モデルへの切り替え

「必要な時に発注する」ジャストインタイム型の調達モデルは今回のナフサショックで機能不全に陥っており、早期確保・在庫保管モデルへの転換が重要なポイントになります。

確実に使用する断熱材や配管材は、契約後すぐ、できれば着工の3カ月前から確保に動くことが現実的なラインとして提唱されています。

早期発注は資金を一時的に拘束しますが、調達できなくなって工期が止まるコストや施主トラブルのリスクと比較すると投資対効果が高い判断です。

業者間で仕入れ量をまとめてメーカー・問屋との関係を強化する協同調達も有効で、地域の工務店組合や勉強会を活用する動きが出始めています。

「情勢が落ち着いてから動く」という待ちの姿勢は、その間にも建材が高騰・枯渇するリスクをそのまま抱え込む判断であることを認識すべきでしょう。

② 契約条件の見直し——スライド条項と見積有効期限の設定

2025年の建設業法改正により「著しい情勢変化による契約内容の変更」が明確に認められるようになり、工務店側から価格変更協議を求める法的根拠が整いました。

見積有効期限は「2週間」程度に設定するのが現実的で、ナフサ価格の乱高下から施主・工務店双方を守るための誠実なルール設定です。

資材価格が一定以上(例:約5%)変動した場合に再見積もりを可能にする「価格変動条項(スライド条項)」の明示も、追加費用を追認してもらうための実務的な手段になります。

ウッドショック時に「口頭合意→施主が支払い拒否→工務店が泣き寝入り」というケースが多発した教訓から、金額を明確にした書面での合意が絶対条件です。

③ 代替素材の選定——非ナフサ系断熱材への仕様変更

ポリスチレン系・ウレタン系断熱材はナフサ由来の代表格であり、グラスウール・セルロースファイバー・羊毛系など非ナフサ系素材への切り替えが技術的に可能な箇所が存在します。

ただし省エネ義務化・ZEH基準を満たせるかどうかの確認が必要で、単純に安い素材へ切り替えるだけでは性能基準を下回るリスクがあります。

内装仕上げ材ではビニル壁紙の代わりに杉腰板・漆喰・和紙など自然素材への回帰が、調達リスクを下げる選択肢として注目されています。

代替素材は調達リスクが低いだけでなく、施主へのプレゼンにおいて「ナフサショックに強い家」という付加価値訴求にもつながります。

仕様変更は設計の早い段階で計画に組み込むことが重要で、着工直前に変更しようとすると設計コスト・工期の両面でロスが大きくなります。

④ 施主への説明体制の整備——信頼性の担保

ナフサショックの実態と自社の対応方針を施主に伝えることは「工務店の誠実さ」を示す行為であり、放置すると着工後のトラブルの火種になります。

値上げ幅・対象素材・根拠資料をセットで提示できると施主も納得しやすく、価格変更の交渉がスムーズに進む確率が上がります。

「施主への不利益」ではなく「双方にとって公正な取引を維持するための変更」というフレーミングで説明する準備が、商談の質を左右します。

新規見込み客に対しても、ナフサショックの状況を正直に情報提供することで「情報を隠さない信頼できる工務店」としての差別化になりうるでしょう。

「コストが上がった」という事実の説明にとどまらず、「だから自社はこう動いている」という対策を伝えることが、受注につながる説明になります。

⑤ 経営リスクの分散——新築一本足からの脱却

2025年の新設住宅着工戸数はすでに62年ぶりの低水準(約74万戸)であり、ナフサショックによるコスト増がさらに新築着工の壁を高くしています。

ナフサショックの影響が大きい新築工事から、影響が相対的に小さいリフォーム・リノベーション市場への需要シフトが加速する可能性があります。

中古住宅・ストック活用市場に対応できる工務店には今後の受注機会が集中するシナリオが現実的で、今から対応力を高める準備が優位性につながります。

資金力や調達力のない中小事業者の市場退場が加速するとも予測されており、「何を、どこで受注するか」の戦略再設計が急務です。

「新築一本足」から「ストック活用・リフォームとの二本柱」への転換を今の段階から考えておくことが、中長期の経営安定につながるでしょう。

まとめ

ナフサショックの終息時期は「ホルムズ海峡が平時の通航水準に戻り、川中・川下のサプライチェーンの目詰まりが解消されるまで」であり、現時点で具体的な見通しは立っていません。

政府が「在庫は足りる」と発言しても、それは総量の話であり、実際の現場では断熱材・住宅設備の受注停止・値上げが止まらない状況が続いています。

今後は資材確保ができた工務店と後手に回った工務店とで、工期・品質・利益率に明確な格差が生まれる「選別の時代」に入ると見るべきでしょう。

「情勢が落ち着いてから対応しよう」という判断は、その間にも価格が上がり在庫が枯渇するリスクをそのまま負い続けるのと同義です。

「早期の建材確保・契約条件の見直し・代替素材の選定・施主説明の整備」

これらを今動かしているかどうかが、2026年後半以降の経営を分けるでしょう。

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②プレカットのコストダウン方法

③建材のコストダウン方法

④設計のコストダウン方法

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