2026年2月のホルムズ海峡封鎖を機に始まったナフサショックは、断熱材・塗料・配管材・住宅設備と、リフォームで使う建材のほぼ全域を同時に直撃しています。
塗料は最大約80%、断熱材は約40%という値上げ幅はウッドショックを上回る深刻さで、短期終息の見通しも立っていません。
そこで本記事では以下の内容について、解説します。
ナフサショックやリフォームの値上がりなどについて気になっている工務店経営者、担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
※本記事内容は2026年4月21日時点の最新情報に基づいております。

監修者
眞木 健一
Make House株式会社 代表取締役
福岡にて1600棟以上の注文住宅の実績。また、casa projectを創業し『casa cube』をはじめとした企画住宅を全国に展開。
その後2社を売却し2016年、技術ある職人や工務店の設計サポートを行うMake House株式会社を立ち上げる。
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ナフサショックとは何か?リフォームとの関係を理解する

ナフサショックとは何か、まずは起きた背景や内容について理解を深めていきましょう。
ナフサショックが起きた経緯と背景
2026年2月28日、イスラエルとアメリカによるイラン攻撃をきっかけに、イランがホルムズ海峡を事実上封鎖しました。
日本のナフサ輸入は約74%を中東産に依存しており、民間在庫はわずか約20日分という脆弱な構造が一気に露呈した形です。
3月下旬から建材メーカーの値上げや出荷停止が連日相次ぎ、2026年3月の国産ナフサ基準価格は封鎖前の約2倍となる62,893円/kLに達しました。
ウッドショックが木材という一素材の問題だったのに対し、今回は断熱材・配管・塗料・シーリング材など石油由来素材の全域を同時多発的に直撃する点で根本的に異なります。
代替素材での回避が機能しにくく、対応が後手に回るほど経営ダメージが深刻化するシナリオが現実味を帯びています。
なぜリフォームがナフサに依存しているのか
断熱材・塩ビ配管・ビニールクロスをはじめ、塗料やシーリング材といったリフォームで使う建材の大半が、ナフサ由来の石油化学製品で作られています。
ナフサから熱分解されるエチレンやプロピレンがポリスチレン・塩ビ樹脂・ウレタンの原料となり、現場に届く段階ではすでに複数の加工工程を経て価格転嫁が積み重なる構造です。
リフォームは新築と違い既存躯体の寸法や施工条件に縛られるため、代替素材への切り替えという判断が新築より格段に難しいのが実情です。
省エネ義務化(2025年以降)でポリスチレン系・ウレタン系断熱材の使用量は増える一方であり、値上がり分をそのまま吸収するのは財務的に厳しくなっています。
リフォームは「石油依存が高い工事」かつ「代替が効きにくい工事」でもあるため、今回のナフサショックは新築以上に直接的な打撃を与えています。
リフォームに直撃するナフサ由来建材の値上がり実態

ナフサ由来建材の値上がり実態について解説します。
リフォームにどのような影響が出るのか、詳しく見ていきましょう。
断熱材の値上がり:ZEH対応工事が詰む
カネカ「カネライトフォーム」は2026年4月出荷分から約40%値上げ、デュポン・スタイロ「スタイロフォーム」も5月出荷分から約40%値上げと、主要XPS断熱材が横並びで大幅な価格改定をかけてきた状況です。
旭化成建材「ネオマフォーム」も5月7日出荷分から概ね約20%の特別調整金が上乗せされており、品目によっては受注制限・生産停止も起きています。
ZEH仕様が標準化しつつある中で断熱材の使用量増加と単価上昇が重なる「ダブルパンチ」は、工務店の見積もり精度を直撃します。
グラスウール・ロックウール・セルロースファイバーなどナフサ非依存の断熱材は比較的安定しており、技術的に切り替え可能な箇所では早期の代替提案がコスト管理の現実解になります。
受注時と着工時の価格差を事前に取り決めておかないと、1棟あたり数十万円単位の損失リスクが生じる点にも注意が必要です。
塗料・シンナー:最大約80%という異常な上昇幅
建築塗料メーカーから約30〜80%の値上げ方針が相次いで示されており、シンナーについては大手メーカーが約50〜80%規模の値上げを実施または予告しています。
塗料・シンナーはナフサ由来の合成樹脂や有機溶剤を原料とするため、外壁塗装・屋根塗装・内装塗装といったリフォームの主要工事がほぼ全て値上げの対象です。
一部の仕入れ先では平時以上の注文を制限する動きも出ており、「材料は手に入るが量が足りない」「工期内に調達できない」という事態も起きつつあります。
過去の単価をそのまま流用すると赤字になるリスクが非常に高く、既存顧客への再見積もり提示かスライド条項での対応が不可欠になっています。
塗装リフォームは今回のナフサショックで最も値上がり幅が大きいカテゴリであり、代替素材で回避するという選択肢が事実上ない点でも深刻な状況といえます。
配管・塩ビ管:水回りリフォームへの波及
水道管・給湯配管・排水管に使われる塩化ビニル樹脂(PVC)はナフサ由来であり、信越化学工業・積水化学工業などが2026年4月の納入分から値上げを実施しています。
配管交換工事や給湯器交換はほぼ全ての住宅で必要になる定番のリフォーム工事であり、ナフサショックを「他人事」として置けない理由がここにあります。
塩ビ管の代替材(架橋ポリエチレン管やポリブテン管)も一定数存在しますが、施工者の習熟と仕入れ先との調整が必要で短期対応は難しいのが実態です。
リフォームは部分的な配管交換が多く既存管材との接続性の問題もあるため、単純な素材置き換えができないケースが多いのが現実です。
水回りリフォームの全体費用は約15〜40万円の値上がりが見込まれており、顧客への予算提示を早期に行いつつ工事タイミングの前倒しを促すことが受注損失を防ぐ手になります。
住宅設備(ユニットバス・給湯器):受注停止という前例のない事態
2026年4月、TOTO・LIXIL・Panasonicの大手3社がほぼ同時にユニットバスの新規受注を停止または納期未定とし、残る主要メーカーがタカラスタンダード1社という異常な状況が続いています。
直接の原因は、ユニットバスの壁に貼るフィルムの接着剤と浴槽コーティング材に使われる有機溶剤が調達困難になったためであり、完成品ではなく原材料の問題です。
クリナップも4月15日付で新規システムバス受注停止が判明しており、タカラスタンダードへの乗り換え需要が集中することで同社でも納期が長期化するリスクがあります。
浴室リフォームを抱えている工務店は「様子見」ではなく、複数メーカーでの並行見積もりと代替案を含めた工程設計を今すぐ動かすことが顧客対応上のリスク管理になります。
リフォーム費用への具体的な影響:いくら上がるのか

リフォーム費用への具体的な影響について解説します。
今後の予測なども含めて参考にしてみてください。
工事種別ごとの値上がり見通し

外壁塗装・断熱改修・配管交換などナフサ由来素材を多く使うリフォーム工事では、費用全体が約3〜8%上昇する見通しが出ています。
塗装工事は最大約80%の材料値上げが通告されており、単価の見直しが最も急がれる工事種別です。
水回りリフォームは設備本体の価格に加え、断熱材・下地材・接着剤・物流費などの周辺コストが積み重なるため、本体価格の上昇以上に全体見積もりが膨らみやすい構造があります。
内装リフォームではビニールクロスが塩ビ製のため直接影響を受けており、漆喰や無垢材などナフサ非依存素材への切り替えが調達安定と単価維持を両立させる有力な選択肢になります。
工事種別によって影響の深刻度と対処法が異なるため、進行中の案件と受注見込み案件を棚卸しして優先順位をつけた対応が現場管理の混乱を最小化するでしょう。
フルリフォームの費用推移と今後の予測
2009年に約790万円だったフルリフォーム費は2025年に1,220万円まで上昇しており、2025年のリフォーム工事費指数は154.6(2009年=100)に達しています。
ウッドショック・円安・職人不足が積み重なった結果であり、今回のナフサショックがさらに「上乗せ」として機能する最悪のタイミングで重なっている状況です。
ナフサ由来建材の価格が高止まりする限り、2026年内にフルリフォーム費が1,300万円を超えるシナリオも現実的な数字になってきます。
「価格が落ち着いてから」という先送りが逆にコスト増になりやすく、施主にとっては今動く方が将来的に安くなる可能性が高いです。
省エネリフォームや子育てエコホームなどの補助金を活用して値上がり分を相殺する提案力が、今後の受注競争における工務店の差別化ポイントになります。
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ナフサショックはいつまで続くのか

ホルムズ海峡は停戦後も平時の約1割未満の通航水準にとどまっており、在庫が時間を稼いでいるだけでルートが回復しない限り安心材料にはなりません。
旭化成の社長は「ナフサ調達は6月中旬〜下旬まで一定の見通しが立った」と述べましたが、夏以降については明言できない状況です。
政府は2026年3月に赤沢経産相を重要物資安定確保担当相に任命しましたが、住宅業界は医療などより優先度が低い扱いとなっており、政府の対応待ちという姿勢は現実的ではありません。
少なくとも2026年内は建材の供給不足と価格の高止まりがさらに深刻化すると予測されており、工務店は建材調達と契約対応を先行させるしかない状況です。
「短期終息」の根拠は現時点でなく、「ナフサ価格が落ち着いたら」という前提での経営判断はリスクそのものといえます。
ナフサショックによるリフォームの影響に対して工務店側がとるべき5つの対策

ナフサショックによるリフォームの影響に対して工務店側がとるべき5つの対策として、以下をご紹介します。
対策① 見積もり有効期限の短縮とスライド条項の明記
今回のナフサショックで実務に最も響くのは、見積もりの有効期限と着工タイミングのズレによる原価圧迫です。
受注時と着工時で断熱材約40%・塗料最大約80%の価格差が生じ、1棟あたり数十万円単位の損失になりかねません。
見積もりの有効期限を「2週間」程度に設定し、資材価格が約5%以上変動した場合に再見積もりを可能にする「価格変動条項(スライド条項)」を契約書に明記することが対策になります。
2025年の建設業法改正で「著しい情勢変化による契約内容の変更」が明確に認められ、工務店側から価格変更協議を求める法的根拠が整いました。
スライド条項は「工務店の身勝手」ではなく適正品質で工事を完結させるための誠実なルール設定であり、施主への説明材料として活用することで信頼を損なわずに導入できます。
対策② 建材の先行発注・在庫確保
確実に使用する断熱材や配管材は、契約後すぐ、できれば着工の3ヶ月前から確保に動くことが今の相場環境では損失回避の基本になります。
「必要な時に発注する」ジャストインタイム型の調達モデルは今回のナフサショック下では機能しないと割り切り、「早期確保・在庫保管」型に切り替えることが経営上の現実解です。
確保した資材を保管するスペースの手当てや在庫コストも発生しますが、入手不可で工期が止まるリスクと天秤にかければ先行確保の方が合理的な判断になります。
出荷制限が続く中で1〜2件分の主要建材バッファを持つことが、現場管理のリスクヘッジになります。
資材の先行確保は資金繰りの問題でもあるため、建設業向けファクタリングや銀行との仕入れ資金枠の相談を並行して進めておくことが中小工務店の生存戦略として重要です。
対策③ 代替素材への切り替え提案
ナフサ依存度の高いXPS系・ウレタン系断熱材からグラスウール・ロックウール・セルロースファイバーなどへの切り替えが技術的に可能な箇所では、今すぐ仕様検討を始めるのが得策です。
内装のビニールクロスに代わり漆喰・杉腰板・和紙などの自然素材を採用することは、調達リスクの低下と工期の安定につながるうえ、施主への差別化提案としても機能します。
ただし省エネ性能基準を満たせるかの確認が必要であり、代替提案は性能確認とセットで行わなければ基準不適合のリスクを生む点に注意が必要です。
代替素材への切り替えは「ナフサショックの影響を受けにくい工事」として施主に説明でき、受注時の安心感の訴求にも使えるコミュニケーション材料になります。
コスト面・供給安定面・省エネ性能面を同時に満たせるかを判断できる素材知識のアップデートが、今こそ工務店の経営力の一部になっています。
対策④ 契約済み顧客への誠実な状況説明
契約済み顧客への対応で最も避けなければならないのは、「黙って損失を被るか、突然の値上げ要求で信頼を壊すか」という二択に追い込まれることです。
早めの状況共有が唯一の出口であり、先手を打った説明が信頼維持の鍵になります。工期延長が必要になった場合も、必ず書面での合意書を締結することが後のトラブル防止に不可欠です。
値上げ交渉の際は「一般的な経済事情激変条項」より「価格変動という表現を使った契約条項」の方が法的に変更請求の根拠として有効だと、匠総合法律事務所の弁護士が指摘しています。
ナフサショックの構造(ホルムズ海峡問題・中東依存の脆弱性・在庫約20日問題)を施主にわかりやすく説明できると、「産業全体の問題」として受け取ってもらいやすくなるでしょう。
対策⑤ リフォーム・ストック市場への事業シフト
2025年の新設住宅着工戸数はすでに62年ぶりの低水準となる約74万戸に達しており、ナフサショックによるコスト増がさらに新築の壁を高くすることで、リフォーム・中古住宅市場への需要シフトが加速する見通しです。
「新築一本足」から「ストック活用・リフォームとの二本柱」への転換を今の段階から構想することが、中長期の経営安定につながります。
資金力や調達力のない中小工務店の市場退場が加速するとも予測されており、仕入れルートの多様化とOB顧客へのメンテナンス営業などのストック化を今のうちに進めることが生存戦略になります。
ナフサショックは「選別の時代」の始まりであり、正確な情報を持ち素早く動ける工務店と対応が遅れる工務店との間で受注格差が一気に開く分岐点になっています。
まとめ
2026年のナフサショックは、リフォーム業界においてウッドショックを上回る深刻な打撃をもたらしています。
断熱材・塗料・配管材・住宅設備といった主要建材が同時多発的に値上がりし、代替で回避しにくい構造が工務店の経営を圧迫しています。
短期終息の根拠が現時点でない以上、「価格が落ち着いてから動く」という判断自体がリスクになりえます。
今すぐ動くべき対策はスライド条項の導入・建材の先行確保・代替素材の仕様検討・顧客への誠実な説明・ストック市場へのシフトの5点です。
正確な情報と迅速な行動力こそが、今後の受注競争において工務店の明暗を分けることになるでしょう。
詳しいコストダウン術は、以下の記事でまとめているのでぜひ参考にしてみてください。
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