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木造住宅に許容応力度計算は必要なのか?これからの工務店経営で生き残るための武器

更新日:2023年7月7日(金)

木造住宅には、許容応力度計算という建物の安全に関する構造計算方法があります。安全性を確保するには重要な計算です。

しかし、平屋・2階建ての木造住宅は、許容応力度計算書の提出を省略することができます。

今回は工務店設計者が疑問に感じることの多い許容応力度計算とは何か?なぜ重要な計算であるはずの許容応力度計算書の提出が省略されているのかを徹底解説いたします。

 

許容応力度計算とは?

許容応力度計算とは、小規模な建築物に使用される構造計算の方法のことです。

具体的な詳細を解説します。

 

「外部から部材にかかる力」これを「応力度」といいます。

「応力度」が、「部材にかかる力に耐えられる力(許容できる力)」以下になることを示す計算方法です。

 

つまり、部材が外部からの力に耐えられるか、という安全性を確認する計算です。構造計算ソフトを用いて以下の検討項目を確認します。

 

  •  壁量計算
  •  壁の配置バランス
  •  水平構面
  •  柱頭柱脚の接合方法
  •  柱や梁、横架材など部材検討
  •  基礎設計
  •  地盤調査
  •  地盤補強工事 

 

許容応力度計算の流れ

許容応力度は次の順番で計算します。

 

  1. 外力の設定
  2. 応力度の計算
  3. 許容応力度の確認

 

順番に解説します。

 

まず、外部から建物にかかる力(外力)を計算します。

 

  • 床や壁にどの程度の力が加わるのか
  • 積雪があった際の荷重はどの程度か
  • 地震や台風がきたときの荷重はどの程度か

 

これらのような外力を設定しなければ、計算が進みません。

 

次に、建物の形状や素材から、構造部材にかかる力(応力度)がどのくらいなのか計算します。「1:外力の設定」の荷重が発生したときに、どのような応力の状態になるのかを確認するためです。

 

そして、構造部材がどれくらいまでの力に耐えられるのか(許容できるのか)を計算します。これが「3:許容応力度」です。

 

この結果「3:許容応力度」が「2:応力度」を上回れば安全な数値です。

 

許容応力度の計算式は、次のとおりです。

「許容応力度[N/㎜2]=材料の基準強度[N/㎜2]×安全率の係数」

 

■材料の基準強度

材料の基準強度は、次の力が加わったときに、変形や破壊に抵抗する力のことです。

 

  • 圧縮力:部材を押しつぶす力
  • 引張力:部材を引き伸ばす力
  • 曲げモーメント:圧縮力と、引張力の両方が発生し湾曲させる力
  • せん断力:ハサミのような、2つの力のすれ違いで破壊する力

 

■安全率

安全率とは、材料の持つ降伏強度を下げる値です。

 

降伏とは、外部からの力で変形した部材が、力を加えるのをやめても元に戻らなくなる状態のことです。

 

安全率を組み込むことによって、設計時の想定より大きな荷重がかかる状態になっても、降伏を防ぐことができます。

 

木造住宅の構造安全性確保のための3つの規定

木造住宅の構造安全性の確保のために、次の3つの規定があります。

 

  • 仕様規定(壁量計算・四分割法・N値計算)
  • 品確法(性能表示計算による確認)
  • 構造計算

 

仕様規定

仕様規定では、構造計算書の提出を省略できます。これを四号特例といいます。

「構造計算書の提出を省略可能」という意味を「構造計算不要」という意味に捉え、構造計算がされていない建物があります。このような建物は「仕様規定」に従って建築されています。

「壁量計算・四分割法・N値計算」という3つの簡易計算方法で計算されます。

 

品格法

住宅品質確保促進法、これを省略して一般的に品確法と呼ばれています。品格法で規定されている住宅性能表示制度による計算では、次の内容をチェックします。

 

  • 壁の量・バランス
  • 床倍率
  • 梁などの接合方法
  • 梁などの横架材
  • 基礎

 

順番に解説します。

 

  • 壁の量・バランス

床の面積に対して適切な量の壁が設置されているか、また、バランスよく設置されているかを確認します。

 

  • 床倍率

床倍率とは、床の強さを表すものです。壁の量をチェックしたときに算出した量に応じた床倍率が必要となります。

 

  • 梁などの接合方法

梁や柱などの接合部分の耐久力を計算し、耐久力を満たす接合工事を行うために必要な金具を選択します。

 

  • 梁などの横架材

積雪・建物の自重・その他の荷重が、梁などの横架材にかかる際に、支えるための耐久力があるかどうか確認します。

 

  • 基礎

地震や重力など、建物への全ての荷重に対して耐久力があるのか、基礎の種類・素材・サイズから確認します。

 

構造計算

構造計算は、仕様規定と品格法よりも細かな計算を行います。建築基準法によって構造計算の方法は決められており、それを「構造計算ルート」といいます。

 

ルートは下記の3種類があります。

 

許容応力度計算(ルート1)

許容応力度等計算(ルート2)

保有水平耐力計算(ルート3)

 

それぞれのルート内で細かい計算があります。それに応じた建築を行うことで、地震や台風がきても倒壊しにくい建物を建築できます。

 

四号特例とは?縮小される見込み

四号特例

「四号特例」とは、構造計算書の提出という作業を省略できる特例のことです。

建物を建築するときは、倒壊する恐れがないか、地震などに耐えられるのかという構造計算を行います。

 

しかし、建築士が設計・計算を行うのであれば、構造計算書の提出を省略できることになっている建物があります。それが、次の条件に当てはまる建物です。

 

木造建築で、

  • 2階建て以下
  • 延べ面積500㎡以下
  • 高さ13m以下
  • 軒の高さ9m以下

 

この条件に当てはまる建物を「四号建築物」といいます。多くの一般住宅がこの対象です。

 

構造計算には時間と費用のコストがかかるため、四号特例を用いて構造計算されていない建物があります。

大事なポイントは「構造計算書の提出を省略できる」のであって、「構造計算しなくていい」ということではない、ということです。実際には四号特例を誤認し、あるいは故意に構造計算されていない建物があります。

 

四号特例を縮小する法改正

「四号特例」により、2階建て以下の木造建築では、構造計算の代わりとして壁量計算で安全性を確認しています。

 

しかし、2022年6月13日、脱炭素社会を実現するために向けた法案が、通常国会で成立しました。この中に「四号特例」の縮小を含む内容があります。

 

脱炭素社会と、建築に何の関係があるのかと思われるかもしれません。

具体的には、脱炭素社会を目指すために、建築物から発生するエネルギー消費が省エネ基準を満たしているか検査する、という内容が今回の法案にあります。

そこで、省エネ基準検査があるのなら構造検査もあるべき、というのが理由です。

 

上記が最終的な決定理由ですが、これまでにも2005年に耐震強度に関する偽装事件が起きたことがあります。その際に、「四号特例の廃止案」が作成されましたが、建築業界からの反対などにより無期延期の事態になっていました。住宅の建築や構造に関する事件・事故があると、四号特例の存在が問題視されていたのです。

 

法律の施行日は、2025年4月を予定とされています。建築業界の企業には大きな影響です。企業には早期の準備が求められます。

 

法改正後何が変わるのか

法改正後の変更点を解説します。

 

  • 四号建築物がなくなる

法律が施行されると「四号建築物」がなくなります。今までの四号建築物は、二号建築物か三号建築物に振り分けられます。

 

  • 特例対象

特例の縮小により、小規模木造建築物のみが特例対象となります。対象の条件は次のとおりです。

 

・木造平家

・延べ床面積が200㎡以下

 

このため、2階建ての木造住宅も構造計算書類が必須となります。

 

許容応力度計算と耐震等級3

 

耐震等級3

耐震等級とは、地震に対する建物の強度を示すものです。これは、耐震性能によって3段階に分かれており、等級1〜3まであります。数字が大きいほど建物の耐震性が高いため、3が一番耐震性能が高い建物です。

 

許容応力度計算と耐震等級3の関係

耐震等級3を取得するためには、許容応力度計算か壁量計算が必要です。この計算を行い安全性が確認される必要があります。

 

許容応力度計算か壁量計算は、許容応力度計算の方がより細かく計算が行われるため、安全性が高い建物といえます。

 

まとめ

 

許容応力度計算とは、構造計算の一つです。四号特例の対象建築物は、構造計算書の提出を省けます。この特例がきっかけとなり、過去に耐震偽装など、さまざまな問題がありました。

 

2022年に四号特例の内容が縮小される法案が可決され、2025年に施行されます。

大きな影響があるルール変更となるため、建築・住宅業界の企業は早めの準備が必須です。構造計算の手間暇を惜しまず、安全性を提供できる企業が重要な存在となります。

 

構造計算をすることで耐震等級3の確保ができ、エンドユーザーへの安心を届けることができます。

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