一般的に受注棟数を増やすことで、仕入れコストを下げようとする考え方がよく見受けられます。
しかし、実際には受注数を伸ばすだけでは大幅なコストダウンを実現しにくいケースが多く、いたずらに拡大路線をとることがリスクにもなり得るのです。
であれば、商品の仕入れ先や仕入れルートを工夫することでコストを下げられるのではないかと考える人もいるかもしれませんが、それだけでは限界があります。
住宅を建築するうえで、積算項目の中でも特に大きな割合を占めるのはプレカット工事、基礎工事、外壁工事、そしてサッシ工事の四つです。
これらをどう効率化するかによって、施工コストは大きく変わってきます。
今回の記事では、どのような仕組みでコストダウンを実現できるのかを詳しく解説し、仕入れ価格そのものを見直す以外の新たな視点をご紹介します。
正しいコストダウン術

【プレカット工事】構造計算により材積を減らす
プレカット工事のコストを抑える鍵は、構造計算(許容応力度計算)を用いて耐力壁の数や梁の大きさを最適化し、材積を減らすことにあります。例えば、壁倍率を上げる設計によって耐力壁の数を減らし、内部空間にゆとりを持たせながらも、用いる木材量を抑えることが可能です。

また、内部直下率を上げると梁のサイズを小さくできるうえ、樹種選択の幅が広がるため、梁成が抑えられ、材積数を減らしてコストダウンできます。こうした工夫の積み重ねが、最終的にプレカット費用を大きく圧縮するポイントといえるでしょう。
【内部直下率を100%にすることで、梁成が抑えられ、材積数を減らしてコストダウン】

【無料】
早く、コスパ良く構造計算を行う入門書

・自社で構造計算を行おうと思っている方
・耐震性を上げたいが、コストは下げたい方
・2025年4月法改正後に業務過多になりたくない方
\早く、コスパよく構造計算を行う手法はこちら/
【基礎工事】地中梁の採用(鉄筋量、コンクリート量を減らす)
基礎工事では、地盤の特性に合わせて適切な基礎形式を採用することが肝心です。あらかじめ地盤を調査し、その強度や水分量を正確に把握することで、最小限の材料でも十分に安全性を確保できる基礎設計を実施できます。

地盤が弱いと判断されれば杭を打ち、布基礎と組み合わせることで建物の荷重を効果的に分散し、地盤沈下のリスクを軽減します。一方で地盤が強い場合は、地中梁を活かす基礎によって立ち上がり部分を抑え、鉄筋やコンクリートの量を減らすことが可能です。
【鉄筋の量を削減、コンクリート量削減、立ち上がりの人工数削減でコストダウン】

こうした最適化によって余分な資材や人工数のコストを削減できるため、基礎工事にかかる費用は大幅に下げられるでしょう。
【無料】
コスト削減できる、新・基礎工法入門書

・コストアップに悩まされている工務店様
・強度は上げたいが、コストは下げたい工務店様
・新しい技術を積極的に取り入れていきたい工務店様
\コスト削減できる新・基礎工法について詳しくはこちら/
【外壁工事】外周面積を減らす
外壁工事は、建物の外周面積をいかに減らせるかがポイントになります。建築面積が同じでも、形が複雑になるほど外周が長くなり、外壁材や下地材、さらにそれを施工する人件費も増加するからです。
極端な例をいえば、正方形に近い形状の建物は形状効率が高く、四周の長さが短いため、外壁や基礎、屋根にかかるコストを抑えられます。
正方形は最も「形状効率」が高く、外周長が短い形状です。一方、形状が複雑になるほど外周長が長くなり、効率が低下します。
同じ100㎡の正方形・長方形・凹型で外周の長さを比較してみましょう。


デザイン性を重視するとどうしても凸凹のある間取りを採用しがちですが、本当にコストを抑えたいならば形はできるだけシンプルにし、余計な凹凸を作らないことが理想的です。見た目のバランスを保ちつつ外周面積を最小限にする設計が、外壁工事のコストダウンにとって重要といえるでしょう。
【無料】
『お客様に選ばれる』ための設計入門書

・お客様のニーズを捉えきれていない工務店様
・デザイン性の高い設計が苦手な工務店様
・高性能住宅を標準にしたい工務店様
\今すぐ知りたい方はこちら/
【サッシ工事】サッシ本数を下げればコストは下がる
サッシ工事のコストを抑えるには、窓の数やサイズを厳選し、必要最小限の開口部にとどめるのがポイントです。窓を減らせば当然サッシの枚数が減り、部材費と施工工数を下げられます。

また、窓が少ないということは外部との熱の出入りも抑えられるため、断熱性能の観点でもプラスに働きます。さらに、既製品と特注品とでは価格に大きな差があるため、選べる範囲では既製品を積極的に使うのが賢明です。
デザイン性とコスパのバランスに優れたFIX窓なども上手に取り入れることで、見た目と性能の両面からメリットを享受できるでしょう。
【無料】
『お客様に選ばれる』ための設計入門書

・お客様のニーズを捉えきれていない工務店様
・デザイン性の高い設計が苦手な工務店様
・高性能住宅を標準にしたい工務店様
\今すぐ知りたい方はこちら/
その他のコストダウン術

屋根勾配を小さくする
一昔前までは、屋根に太陽光発電を載せるにはある程度の勾配が必要だと考えられていました。しかし、太陽光パネルの性能が向上した現在では、約5%程度の緩やかな勾配でも発電効率に大きな影響を与えないといわれています。
従来、太陽光発電を設置する屋根には十分な勾配が求められていました。
しかし、現在ではパネルの性能向上により、約5%程度の緩やかな勾配でも発電効率に大きな影響を及ぼさなくなっています。

そのため、屋根の傾斜を緩やかにして材料費や施工手間を減らすことで、結果的にコストを下げることが可能です。もちろん、地域や気象条件によっては大雪や強風への対策が必要となりますが、それでも従来よりは自由度が増し、合理的なコストダウンが期待できます。
プランをコンパクトにする
建築費を抑えるうえで非常にシンプルな方法の一つが、建物の床面積を少しでもコンパクトに設計することです。土地価格や住宅ローン金利が上昇している背景もあり、いまはミニマルライフを好む人々からも小さめの住宅プランが支持されています。


小さいからといって居住性が犠牲になるわけではなく、動線や間取りを工夫すれば快適さを保ちながら無駄なスペースを削ることが可能です。施工面積が減れば外壁や基礎、さらには設備にかかる費用も相対的に抑えられるため、現在の潮流としても取り入れやすい選択肢といえるでしょう。
まとめ
住宅の高性能化やGX志向の広がりによって、建築コストは今後も上がり続ける可能性があります。それに伴い、工務店の利益が圧迫されるケースが増えてしまうため、設計段階から費用を見直すコストダウン術はこれまで以上に重要といえるでしょう。
今回ご紹介したプレカット工事、基礎工事、外壁工事、サッシ工事に加え、屋根勾配やプランを工夫することで、実際の施工費を大きく抑えられるようになります。商品の仕入れ価格自体を見直すのではなく、建物の構造や形状を再考し、必要な要素に的確に投資することが、これからの時代の家づくりにおける正しいコストダウンのあり方です。
ぜひ、これらのポイントを押さえて、質の高い住宅をより無理なく提供できる仕組みづくりを目指してみてください。