工務店の中で、確立した集客手法やサービスを持っているところは多くはありません。
また、顧客にとって家づくりは、建てる場所、建築可能な商品、かかる費用など未確定な要素が多い中、建築会社の選定をすすめていくことになります。
多数の競合他社の中から顧客へ選ばれるには、自社のアピールポイントやターゲット層を明確化し、ブランディングを確立することが必要です。
そこで、今回は自社が選ばれるために必要なマーケティングについて徹底解説していきます。
目次
マーケティングとは「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」と定義されています。
企業と顧客双方にメリットのある「顧客自身に選ばれる販売の仕組みづくり」を行う販売活動のことをさします。
出典:日本マーケティング協会 マーケティングの定義
工務店におけるマーケティングの目的は、自社の社名を認知させることや売り上げを増やすことです。顧客にとっての価値を満たし目的を実現するために実施すべき内容は、下記の通りです。
① 「誰に」「どういった価値を」提供すれば市場のニーズを満たせるかを調査
② 調査内容から導き出したペルソナに当てはめて「アピールするべき内容と周知方法」を検討
③ 「顧客に選ばれる」ための集客活動と競合他社との差別化の実施
④ 集客後の「ファン化」による顧客の囲い込みと成約への結び付け
⑤ 成約した顧客の満足感を高め、口コミへの協力や紹介獲得により次へつなげる
マーケティングによって、顧客自身についての理解を深め、顧客の隠れたニーズを発掘し、顧客の希望するかたちで実現することができれば、顧客数も売上数もおのずとついてくるようになります。
顧客へ提供するべき方向性を見誤らないためにも、マーケティングによる分析は重要です。
マーケティング戦略の進め方について一段階ずつ詳しく解説します。売り込みを必要とせずに顧客の購買意欲が高まる状態を達成するために必要な手順となります。
他社との差別化を図るための「自社の強みはどのようなことか」と顧客視点から見た「気に入った点」との誤差を減らすことが大切です。そのためには、顧客から得られる情報を精査します。
例えば、要望、クレーム、オーナーや成約済顧客からの口コミ、集客活動への反応、見込み客の客層と成約済客の客層との比較などを分析します。
顧客情報の分析結果より、ターゲット層を導き出します。家族構成、年齢、子どもの年齢、職業、想定年収、趣味、休日の過ごし方、悩みごとなどを仮定したペルソナを設定します。
「ペルソナ」とはラテン語で仮面を意味しており、一人の架空のユーザー像のことです。ペルソナを設定することで、新しい施策に着手する際、社内の部署ごとのターゲットの認識のズレを防ぐことやユーザー視点での方向性を見出すことが可能です。
隠れたニーズの想像する際にもペルソナ設定することで、どういった生活を希望しているか、住まいづくりに対して何を望んでいるかなどをイメージしやすくなります。
調査内容を踏まえてペルソナ設定を行ったら、そのペルソナに刺さる情報提供の方法や情報提供する内容について検討します。
顧客へのアプローチは、①社名や商品を認知させること。②自社の情報を顧客との接触頻度を高めてファン化すること。③展示場やイベントへの誘致や打合せの開始。といった大きく3つの段階に分けて戦略を立てます。すべての段階で「誰に」「どういった価値」を伝えるために「どのような施策」が必要かを念頭に置いて、ペルソナに当てはめて内容を決定していきます。
顧客へのアプローチの中で社名認知〜ファン化までのプロセスについて解説します。この段階では間口を広げ、多くの顧客に知ってもらうことが大切です。また、ファン化を進めるには、多くの情報を知ってもらうことが効果的です。
例えば、
①SNSとWEBサイトを行き来する
②Facebook、Instagram、Twitter といったSNSサイト同士をリンクさせる
③紙媒体や看板からSNSやWEBサイトへの誘導
④SNSでイベントや見学会の告知を行って来場を促す。
上記のような内容の組み合わせによって、自社で提供している情報の中で顧客を回遊させるイメージをしていただければと思います。
チラシの折り込みやポスティングは、配布地域を限定して行うことができるので地元密着型の工務店にはぴったりの方法です。
チラシは、パッと見ただけで廃棄されてしまうことを防ぐために、QRコードを掲載してWEBサイトへの誘導を企てましょう。
また、見学会を行う際に周辺の住宅に声掛けやポスティングを行って来場を促すことも社名の認知に大きく貢献します。
ポータルサイトへの登録やWEBサイトの運営、SNSやYouTubeでの情報発信が考えられます。
WEBによる情報発信において、押さえておくべきポイントについては下記の通りです。
近年、情報収集は、移動時間や休憩時間といった隙間時間を利用する傾向が強くなっています。総務庁の調査によると、スマートフォンの世帯所有率は86.8%、インターネットを利用する際の機器もモバイル機器がPCを上回っていると発表されています。
よって、広告宣伝や情報の配信においてもスマートフォンへの対応が必要不可欠です。
出典:総務省 令和3年度情報通信白書
SEO対策とは、検索エンジンを使用時に上位に表示させるための対策のことをいいます。「工務店×(地域名)」や「(地域名)×家づくり」といった検索で上位表示されると閲覧数は自然と増加していきます。
「工務店×(地域名)×(アピールポイント)」や「(アピールポイント)×住宅」での検索上位を狙います。自社の強みと合致したニーズを持った顧客は、元々ファンとなる要素が強く見込み客となる可能性が大きいと考えられます。
WEBサイトのデザインや見やすさやスマホでの見やすさも大切です。SNSは隙間時間での確認するケースが大半なので、じっくりと伝えたいこだわりの部分や性能についての解説を掲載しましょう。
スタッフ紹介や会社の代表あいさつといったスタッフの人間性が伝わるページやQ&Aコーナー、口コミ情報が載っていると安心感が増します。
いつ見ても新しい情報が出ていると、何度でも定期的に訪れたくなります。施工例やお客様の声といったコンテンツは更新がしやすく、顧客にとって実際にどんな家が建てられるかを知ることができるメリットが大きいので、更新コンテンツとしてお勧めです。
家づくりにおいて、他社に負けないポイントを存分にアピールして印象づけましょう。
ファン化に成功し、展示場やイベントへ来場を促し、打合せを開始する際の取り組みについて説明します。
どんなにWEBサイトを充実させても、一生に一度の買い物である住宅は、WEB上だけで成約に至ることは困難です。実物を見学していただき、肌で感じる部分も大切にしていただいて納得のいく家づくりをしていただけるようサポートしましょう。
ファン化のなされた顧客を住宅展示場や建売住宅、見学会会場といった実際の建物に誘致します。コロナ禍によりVR展示場やオンライン見学会を利用できる建設会社も増えています。
展示場や建売で家具を配置した室内の雰囲気を味わったり、見学会では実物サイズの広さや一般的に使われることの多い住宅設備を見ていただきましょう。
また、Youtube による見学会場潜入レポートも人気コンテンツとなっています。室内を動画で見せられるのは大きな強みです。
ファン化はなされていても時期的にまだまだ先と考えている顧客にとって、展示場来場はハードルが高いことも多いです。定期的に資金セミナーや家づくりの第一歩を踏み出す方へのセミナーなどと開催し、接触頻度を落とさないようにしましょう。
成約済客やオーナーからいただく紹介は貴重な情報です。紹介をいただくためには、契約後〜施工中も顧客の満足感を満たし続けることが必要です。
お客様へアンケート調査を実施して、要望や不満点、満足した点といった口コミを集めましょう。記載いただいた内容は、下記のような活用方法があります。
① 顧客のニーズをマーケティングの調査へ還元して、ペルソナの見直しへ利用する
② 顧客の了承を得られれば、ホームページの口コミページへ記載して、新規顧客へアプローチする
③ 新商品開発の参考とする。
工務店におけるマーケティング戦略の重要性と実践方法について解説しました。
マーケティングは、一度取り組んで完成するわけではなく、日々、進化改良を積み重ねていく必要があります。
現状、本格的にマーケティングに取り組み始めている工務店はまだまだ少ないといえます。
自社の強みを明確にすることで、自社、顧客双方に価値を共有していけるマーケティング。競合他社より先に取り組んで差別化を進めてみてはいかがでしょうか。