コロナ禍以降、住宅業界も大きな変化が起こり、工務店も対応に追われている状況が続いています。
家づくりを検討しているユーザーの行動はリアルからオンラインへと移行し、特にSNSなどで情報収集する30〜40代のユーザーが多くなっています。また、資材高騰の中で、受注を獲得するために工務店の低価格競争もますます激化し、受注を獲得しても多くの工務店が十分な利益を得られず、経営難にあえぐ状況が続いています。
このように外部環境でコストが上がる一方で、他の部分でコストダウンをせざる負えない状況が、今の工務店経営における重要なポイントとなっています。
今回はその背景を分析し、工務店の経営改善のヒントに迫っていきます。
目次
ここでは、外部環境におけるコストが上がる要因について解説します。
国外情勢が不安定化する中、輸入材料の原価高騰は留まるところを知りません。
また円安の煽り、原油価格高騰はあらゆる建設コストにリンクしており、その動きに拍車を掛けています。
住宅の販売価格を維持しつづけるためには、原価圧縮は避けては通れない課題なのです。
住宅販売においてボリュームゾーンとなる中間層の世帯所得が不安定化しており、全体としては下降傾向にあるのは周知の事実です。
新規住宅着工数も減少する中、より幅広い層に住宅を買ってもらうためには、販売価格はなるべく抑えたいところ。
一方で付加価値の向上を図っても、大きく予算を超える工務店は比較の対象外となるため、仕様と価格抑制のバランス感覚が必要となります。
建築業界の働き手の労働生産性も、一つ一つの影響は少なくても、累積することで工務店経営に直接影響を与える大きな要因となります。
以前は可能だった残業・休日業務による梃入れも難しく、割ける人員にも限りがあります。
また、建築従事者の高年齢化・多国籍化は現場の収支にも影響している一方、若年層の教育ができる人材が不在であることなども、長期的な生産性を圧迫している一因です。
闇雲な原価圧縮や人員削減を行うだけでは、目覚ましい経営改善効果は得られません。
場合によっては、会社として必要な人材をも失ってしまったり、商品の魅力が低減することで工務店としての評価を下げる恐れも。
この場合、コストカットによりさらに利益率が低下する悪循環に陥る恐れもあります、鳥瞰的な目線で確認すべきポイントについて説明します。
初めに着手すべきは、自社の経営状態を見直し、どの業務に最もリソースを費やしているか洗い出すことです。
今現在という一次元的な分析軸ではなく、以前に比べて利益の出ていない、もしくは他部門の足を引っ張っている業務・部署がないか、経年比較することでより問題を多面的に把握します。
経営難にあえぐ工務店の多くは、これらの不可視な情報に対して無自覚な事が多いため、まずは見えない問題を発見することから始めてください。
上記調査をもとに、計画通りに機能していない箇所を確認したら、その原因をさらに詳細に分析します。
例として、中間業者が多く介在することで利益率を圧迫している、人員配置の非効率化により受注額辺り労務費が上っている、広告・販売促進費を上げても集客率が下がっている、といった形で、原因と減少に対する因果関係まで明らかにすることが必要です。
経営の原因と課題が判明しても、どれが最も経営改善に直結するか正確に予言することは不可能です。
そのため、確率として最も確からしい仮説に基づき、年次・月次目標を立て、検証を行っていきます。
例えば価格上昇の著しい原料の単価・発注量を一元的に管理するシステム導入、人件費のかかる訪問営業を切り詰めてオンライン化していく、など、課題一つに極力具体的なアクションを起こし、その効果をフィードバックしてください。
人材育成や広告など、効果に時間のかかるものもあるため、少なくとも数年タームで継続的に検証するとよいでしょう。
各部門のコストダウンに取り掛かる前段階の進め方が見えた上で、具体的な改善策について触れていきます。
その方法論は少なくとも工務店の数だけあり、どれから手をつければ良いかわからない経営者の方も多いでしょう。
本記事では、多くの工務店において共通の課題であり、かつすぐに取り掛かれる効果の現れやすいコストダウン戦略を3つご紹介しますので参考としてみてください。
工務店経営のうち多くのリソースがかかっているのが広告・販促費です。
テレアポや折り込み広告などの従来の営業方法は、商圏範囲や効果期間が限定的なのに対し、ランニングコストが多くかかるのが難点のため、より現代のターゲット層に刺さる方法へと切り替えていきましょう。
イニシャルコストもコンパクトに収めることが可能で、かつSNSやホームページのコンテンツは会社の財産の一つとなり、持続的な効果が期待できます。
集客、営業から契約、そして着工に至るプロセスは小規模工務店においても複雑で管理が難しいものです。
それらワークフローを一元管理するITツール導入により、課題を明確化し、営業プロセスに内在する労務費・経費などの無駄の削減が可能となります。
すでに多くの工務店で導入された実績あるツールが多く存在するため、その効果はある程度信頼できるものといってよいでしょう。
最も効果が大きく、一方で実は難易度の高いコストダウン手法となります。
近年では、発注者の注文住宅に関するリテラシーが高く、安易なコストカットは工務店の評価を損なうこととなるため、避けた方がよいでしょう。
近年では、合板やMDFなどの下地用材料を敢えて仕上げとし、トレンドのラフでクラフト感あるデザインと工事費低減を両立するなどのノウハウも蓄積されてきているため、参考としてみてください。
自社の課題が見えない中で見境なくコストカットを行うと、工務店のリソースのみならずクライアントの評判も下げる恐れがあることがお分かりいただけたかと思います。
一方で、ワークフローの改善や広報の在り方の見直しなど、コストカット以上に業務改善のリターンが大きな一石二鳥の改善策もあるため、決してデメリットばかりではないため、経営状態のよい工務店においても取り組みの価値は高いといえます。
利益率を押し下げているポイントを見える化し、最も効果の高いツボに集中投資することで、持続的に利益改善を目指しましょう。
先行きの見えない不透明な時代に、どこからコストダウンに手をつけたら良いのか、、そのための手法についてホワイトペーパーにまとめましたので参考にしてください。
目次
・こんなお悩みはありませんか?
・職人の単価が高くなった
・建材の高騰で予算に合わない
・メーカーの見積もりが予算に合わない
・職人によって、品質・工期が不安定
・複雑な設計で工事費が上がる