近年、建設業界の変革が叫ばれる中、「工務店DX」という言葉を耳にすることが増えてきました。しかし、実際のところ、このDXとは何なのか、またなぜ今の工務店にとって必須なのか、正確な理解を持っている方は少ないかもしれません。今回の記事では、工務店DXの意味、なぜそれが必要なのか、そしてDXを成功させるためのポイントについて徹底的に解説します。
目次
デジタル変革が様々な業界を席巻する中、建築業界もその影響を受け始めています。特に工務店にとって「DX」という言葉は、ただの流行語ではなく、今後の競争力を維持・向上させるための必須要素となってきています。しかし、具体的に「工務店DX」とはどのようなものなのか、また、従来のIT化やシステム導入とは何が違うのでしょうか。以下で、DXの特徴と定義、そしてIT化との違いについて詳しく解説していきます。
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略です。DXは以下のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0
この定義は、次のように考えられます。
デジタル技術を駆使し、オンラインとオフラインどちらの形式のニーズであっても顧客に価値を提供できることが重要です。
DXとIT化は定義の位置付けが違うため、別ものとして捉えなければいけません。
IT化は、業務の効率化やコスト削減を目的にしていました。効率を良くするために、情報化・デジタル化を推進しています。
一方で、DXでの「効率化」は手段であり、目的は企業の全体的な組織としての変革を推進し、競争力を持ち優位に立つことです。 その結果顧客に価値を生み出します。
別の表現をすると、DXは新しい価値を生み出すことを重要視し、ITは業務効率化を重要視していることが多いです。
コロナ禍の影響でオンライン化の動きが加速し、それに伴い消費者の期待も大きく変わり始めています。さらに、2025年という時点での予想される業界の「崖」を前にして、工務店としてはDXへの取り組みは避けて通れない課題となっています。ここでは、DXの必要性や今後の業界の動向、どのように取り組むべきかの具体的な指針について探っていきます。
新型コロナウイルスの感染拡大が原因となり、リモートワークが多くなったことで、オンライン上での商談が急速で多くなりました。オンライン化に対応できなければ、変化していく顧客のニーズに応えることができない状況になっています。
顧客や社会のニーズに応えるために、今までのビジネスモデルを見直し、社会の変化という外部環境に合わせてビジネスモデルを柔軟に変化させなければいけません。
この変化には注意点もあります。自社の社長や幹部のみがDXを取り入れた変化を目指して急に動き出すと、実際に現場で働く従業員たちとギャップが生じます。経営と現場で乖離が起きると、小さな問題でも後々大きなことに発展しかねません。
DX化を推し進めても、ITツールの使用が苦手であれば業務の効率が低下する可能性もあります。そのような社員でも、ノウハウを身につけられるような環境を会社は準備しておく必要があります。新たなことを取り入れるのですから、抵抗があるひともいるでしょう。周囲の理解を得ながら進めていくことがとても重要です。
工務店がDXを進めていくうえで重要となるシステムを紹介します。
工務店においては、次のシステムの導入がおすすめです。
SFA・CRMは、営業活動や顧客管理のデータ自動化など、効率化に欠かせない下記の機能を備えています。
これらのシステム機能があるため、日々の業務の効率化に非常に役立ちます。空いた時間をほかの業務に充てることができるため、生産性も向上しやすいです。
BIMは、建物の計画や設計の段階から3次元モデルを使用します。該当プロジェクトに関わる全てのメンバーと建築情報の共有ができるシステムで、工事内容に変更が生じた場合、3次元モデルを変更させると関連する図面なども全て変更可能です。業務効率や案件管理のスピード面で大きな役割を果たします。
どちらも工務店DXを推進するために役に立つシステムです。
「2025年の崖」というのは、2018年に経済産業省の調査により明らかになった、IT業界による経済損失のことです。
既存の各ITシステムの限界や、ITの人材不足により2025〜2030年の間に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性がある、という調査報告が行われました。
IT業界の人材不足は、2025年までに約43万人になると予測されています。
21年以上にわたって使用されているシステムは、2018年の段階では企業全体の2割でしたが、2025年までに6割に到達する予測が立っています。
長く生き残るために、次のことが必要です。
短期間でできることではないため、早めに行動して取りかかることが大切です。
デジタル変革を進める上で、ただ技術やツールを導入するだけでは十分な効果は得られません。成功の鍵は、その適用方法や戦略の中でどう活かすかです。工務店におけるDX成功のためには、WEB集客の最適化、顧客管理の効率化、そしてオンラインでの打ち合わせやVRを活用した展示場体験など、新しいアプローチが求められます。ここでは、それぞれの要点と、これらを効果的に実践するためのヒントを深掘りしていきます。
WEB集客のポイントは勘や経験だけに頼らず、SFA、CRMなどのシステムを利用することです。根拠のある効果的な方法で集客が可能になります。
また、それと同時にSNS・ホームページの強化も行っていきましょう。お客様が求めている情報をわかりやすく届けていくことが重要です。
具体的な対策例は下記になります。
上記は一例ですが、不得意な分野は外注することも視野に入れながらDX化を行っていきましょう。
顧客管理システムを導入することが重要です。
CRM(顧客管理システム)は、デジタルで一括管理ができるため業務効率が上がり、その結果契約率も上げられる可能性があります。
また、下記業務内容を社内で共有できるため、業務の属人化を防げます。
DX化へのシステムを利用するかどうかで業務の効率に大きな差が生まれます。
ZOOMなどのビデオ通話アプリや、Web会議システムを使用してオンラインで打ち合わせを実施しましょう。背景などは簡単に変更できるため、静かな場所でネット環境があればオンライン商談はどこでも可能です。
これまで訪問営業で無駄になっていた移動時間や交通費などのコストを削減でき、打ち合わせの回数を増やせるなど、業務の効率化につながります。
VRを活用したバーチャル展示場を利用しましょう。
VR作成ソフトを使用して3D映像で展示場の中が見学できるようにします。VRを活用することで、顧客は自宅にいながら展示場に来場したかのように見学していただけます。
コロナ禍の影響により来場数が激減した住宅展示場など、集客が難しい場合に有効です。
また、遠方により来場が難しい方に向けてのアプローチや、事務所と展示場が一緒ではない場合に、移動時間を削減できるなどのメリットがあります。
一方でバーチャル展示場のシステムの用意と、案内方法のマニュアル作成など、VR展示場が始動する際にコストが発生します。しかし、一度かたちが整えば質を上げながら長く使用できる対策方法です。
工務店がDX化を推し進めていくことが必要な理由と、どのようなポイントでDXを導入するのがおすすめなのか解説しました。
コロナウイルスが蔓延したことが要因となり、リモートワークが広がりました。このことがきっかけとなり、さまざまなシステムや業務がオンライン化し、その流れに対応しなければいけない状況です。
工務店がDXを導入していくポイントは下記になります。
さまざまなITツールがあるので活用しながら業務の効率化も進めていき、顧客ニーズに応えられる価値を提供できるようにしましょう。