「耐震等級3は取るべき?」
「耐震等級を決める算出方法が知りたい」
工務店経営者の方でこのように耐震等級について疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。
近年では耐震性の高い耐震等級3を取る工務店が増えていますが、算出方法によって耐震強度の評価が異なるため、同じ耐震等級3でも実際の耐震性能に差が出る可能性があるので注意が必要です。
安心安全な建物を建てるためにも、耐震等級3についてしっかりと理解する必要があります。
今回の記事では、許容応力度計算による耐震等級3について詳しく解説します。
また、その他の計算方法との違いも解説しますので、耐震等級3の取得についてお悩みの工務店経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
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目次
耐震等級とは建物の耐震性に対する指標の1つです。住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)によって定められた住宅性能表示ですが、建築基準法よりも細かい項目が設定されています。
耐震等級は3つのランクに分かれており、数字が大きくなるほど耐震性が向上します。そのため、地震保険料が安くなるメリットもあります。
さらに、金融機関によっては住宅ローンの金利優遇を受けられるメリットもあるため、できれば耐震等級3を取りたいところです。
耐震等級1は、建築基準法上の最低限の基準を満たす最も低い等級です。品確法における耐震等級は1995年に発生した阪神淡路大震災を受けて制定されたため、耐震等級1は震度6~7程度の大地震に1度は耐えられる耐震性能です。
しかし、建築基準法上の最低限の耐震性能を満たす基準のため、損傷する可能性はあります。
実際に震度6~7程度の大地震が起きた場合は倒壊しなくても損傷を受けた場合、損傷具合によっては建て替えが必要になる可能性があるでしょう。
耐震等級2は耐震等級1で想定される1.25倍の地震に耐えられるレベルです。震度6~7程度の大地震において倒壊しない耐震性能で、震度5程度の地震において損傷しにくいことが求められます。
災害時の避難所として利用される学校や、病院などの施設は耐震等級2以上の強度が必須です。
しかし、近年、日本においては東日本大震災や令和6年能登半島地震など大地震が続いているため、より安全性の高い耐震等級3が注目されています。
耐震等級3は耐震等級1で想定される1.5倍の地震に耐えられるレベルで、現在の耐震性を表す基準の最も高いランクです。震度6~7程度の大地震において倒壊せず、損傷も少ないため、地震後の余震にも対応可能です。
災害時の拠点となる消防署や、警察署などの施設は耐震等級3の建物となっています。
実際に2016年に起こった熊本地震では、震度7が2回計測されていますが、耐震等級3の建物は大きな被害を受けなかったことが報告されています。
過去の例からも耐震等級3の建物には優れた耐震性能があるため、今後の大地震においても安心できるでしょう。
ただし、耐震等級3であっても、算出方法が変わると強度ランクが異なるため、次の章で詳しく解説します。
耐震等級を決める際の算出方法には、以下の3つの方法があります。算出方法によって安全性が異なるため、それぞれの方法について詳しく解説します。
仕様規定は耐震性能を維持するための最低限の簡易計算で行われます。壁量計算、四分割法、N値計算といった計算方法がありますが、決められた規定に従って設計するだけなので、負担が少ない方法です。
なお、仕様規定による算出方法では、耐震等級2や耐震等級3を取れません。
性能表示計算は、品確法で規定されている住宅性能表示制度における計算方法です。仕様規定による計算に加えて、床・屋根倍率の確認と床倍率に応じた横架材接合部の倍率を検証します。
性能表示計算によって建てられる住宅は耐震等級3の取得が可能で、許容応力度計算と比較して費用が安く、時間もかかりません。
許容応力度計算とは柱や梁、基礎などの部材すべてにかかる力も検証する方法で、代表的な構造計算です。耐震等級を決める際の算出方法としては最も優れた方法ですが、時間とコストがかかります。
計算書類は仕様規定による算出においてはA3用紙1枚で収まりますが、許容応力度計算では数百枚に及ぶこともあります。
許容応力度計算と構造計算の違いについては、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
許容応力度計算と構造計算の違い|コストと安全性を意識した効率的な構造設計
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耐震等級3を取るためには、性能表示計算または許容応力度計算を選択する必要がありますが、どちらの方法かによって強度のランクが異なります。
性能表示計算でも耐震等級3は取れますが、許容応力度計算による耐震等級3と比較すると強度ランクが低くなります。
検討項目が性能表示計算よりも許容応力度計算のほうが、より詳細になっていることも要因ですが、耐力壁に関しても、性能表示計算のほうが必要とする量が少なくなります。
また、性能表示計算は定められた仕様に従って設計を行えば良いため、許容応力度計算で行うような細かい計算を省略することが可能です。
仕様規定における耐震強度を1とした場合の強度ランクは、同じ耐震等級3で比較すると、許容応力度計算は1.9~2.0になっていますが、許容応力度計算は2.4~2.7と大きな違いがあります。
許容応力度計算での検討項目は、次のとおりです。
性能表示計算よりも許容応力度計算のほうが検討項目が多く、必要とする耐力壁の量も多くなります。
さらに、許容応力度計算による耐震等級2の強度ランクは2.0~2.2となっており、性能表示計算による耐震等級3の強度ランクよりも上回っていることがほとんどです。
許容応力度計算による耐震等級3を取るには時間とコストがかかりますが、安全性を確保するためには、許容応力度計算を行うことが推奨されます。
許容応力度計算は安全な建物を建てるための優れた方法ですが、実際には多くの工務店が性能表示計算によって耐震等級3を取っているのが実情です。
なぜ許容応力度計算が選ばれないのかは、以下の理由が考えられます。
まず、許容応力度計算には専門的な知識が求められるため、構造設計一級建築士の資格が必要です。
構造設計一級建築士の資格は難易度が高く、2024年4月時点では、一級建築士が約38万人なのに対し、構造設計一級建築士は約1万人しか登録されていません。
また、許容応力度計算を行うためには時間とコストがかかります。費用対効果を考慮すると、性能表示計算を選択する工務店が多くなるでしょう。
しかし、今後起こりうる大地震に備えるためには、許容応力度計算による耐震等級3を取得した住宅を建てる必要があります。
今回の記事では、許容応力度計算による耐震等級3について詳しく解説しました。
性能表示計算でも耐震等級3は取れますが、強度ランクが異なります。
近年、大きな地震が増えていますが、許容応力度計算による耐震等級3を取得した家であれば安心できるでしょう。
そのため、工務店では許容応力度計算による耐震等級3を取得できる体制を整える必要があります。
しかし、現実的には自社で許容応力度計算によって耐震等級3を取れる工務店は少ないため、信頼できる設計事務所に外注することをおすすめします。
当社Make Houseは、許容応力度計算を含む設計業務の全面的なサポートサービスを提供しています。
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