2022年も残すところ残りわずかとなっており、いまだ続く建築資材の価格高騰が2023年以降も続くのか、気になる工務店経営者の方も多いと思います。
今回の記事では、2022年に何が原因で建築資材が高騰しているのかを解説し、価格高騰が発生している社会・経済事情について振り返ります。
また、今後の建築資材価格の動向についても解説しますので、工務店経営者の方はこれから注文住宅購入を検討しているお客様に向けて説明する内容として参考にしてください。
まずは、建築資材が高騰している原因について振り返りたいと思います。原因は大きく下記の5点です。
ウッドショックにより、輸入木材価格が高騰しました。2020年に始まったコロナウイルスの流行拡大を受け、リモートワークが世界中で増加。そのため、アメリカ・中国で郊外に住宅を建て転居する動きが広がり、住宅建築需要が急拡大したのです。これにより木材不足となり、価格が高騰する「ウッドショック」が発生しました。住宅建築の際に木材を大量に使うため、建築資材の価格が上がり大きな影響が出ています。
また、生活に必要な木製家具も種類が多くて人気です。テーブルや椅子などはもちろんのこと、ソファは外からではわかりませんが、内部のフレームは木でできています。このように家具の価格にも影響を与えています。
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木材価格と同様に鉄の輸入価格も上昇しています。この、鉄価格の急激な高騰のことをアイアンショックといいます。
鉄筋や鉄骨などは、オフィスビル・物流施設・大型商業施設・マンションなどの建設で大量に使用されます。さまざまな住宅設備にも使用されていますので、建築資材と住宅設備の両方の価格に影響を与えています。
鉄の価格が上昇した要因は、ウッドショックと同様にアメリカ・中国での住宅需要の増加が関係しています。コロナウイルスが少し落ち着いた際に経済活動が再開され、住宅需要が急に増加しました。鉄を多く使用するため、それに伴って主原料の鉄鉱石が不足する事態になり、価格高騰を引き起こしています。
日本は鉱物資源の多くを輸入に頼っています。鉄鉱石については100%輸入に依存している状態です。世界的な供給不足により、価格が高騰する影響を受けても輸入に頼るしかないため、建築資材の高騰からは逃れられないのです。
ロシア・ウクライナ間での戦争が要因となり発動された、ロシアへの経済制裁も建築資材高騰の要因の一つになっています。
日本を含め多くの国が経済制裁のために、資源大国であるロシアから建築資材に関連する多くのものを、輸入できない状態になりました。
世界中の国がロシア以外の国から資源を輸入すると、世界中の資源価格は高騰していきます。日本は高騰した価格で資源を買わなければいけないので、輸入価格が高い状態で購入しているのが現状です。
政府が決定したロシアからの輸入禁止項目に、木材チップ・丸太・単板など住宅資材が含まれています。特に影響があるのが単板です。日本がロシアから輸入する単板の量は、単板全体の80%を超えていました。単板においてはロシア1ヵ国からの輸入にほとんど頼っていたのです。こうして木材の需要と供給のバランスが崩れ、価格への影響が出てしまっています。
コロナウイルスの蔓延が原因となり、コンテナ不足になったことによりコンテナ料金が上がっています。一見すると、これがなぜ資材価格の高騰につながるのか、と思われるかもしれません。
原因は、ステイホームやリモートワークが広がったことにより、物流の動きが活性化し過ぎたことです。人が動かず、物のみが大量に動くことになり、コンテナ不足に陥ったのです。住宅需要が高まり、関連する資材・設備などを運ぶコンテナ不足となると、運送などの物流価格が上がります。その上がった分の金額は資材価格の値上げに影響を与え、最終的には住宅価格の値上げにつながっていきます。
2022年に入ると円安が加速し、一時的に1ドル=150円台まで円安・ドル高の状態が進行しました。円安になると輸入時に費用が増えるので、これまでよりも仕入れ価格が高くなります。日本は前述した鉄鉱石も含め、建築資材の多くを輸入に頼っているため、円安も建築資材高騰の要因です。
円安になっている原因の一つは、日本の低金利政策です。
世界の主要国は、インフレに伴う物価上昇を抑えるために、中央銀行が金利を上げてインフレ対策を行っている状況です。それに反して日本は低金利を維持していますので、早くから金利を上げる施策に取り組んでいるアメリカとは金利差が広がりつつあります。
金利の低い「円」よりも金利が高く世界通貨となっている「ドル」を買おう、という動きが活発になると、円が売られてドルが買われる状況が続き、円安がますます進行してしまう状況になっています。
このように、2022年は様々な要因によりコストが上がり、利益を減らす工務店が多い年となりました。2023年以降も状況は大きく変わらないことが予測されるため、経営努力によりコストを下げることが必須となります。他社よりもコストダウンとを実現し、競争力をつけるポイントについて以下の資料で解説しています。
この資材価格高騰は2023年以降も続くのかについて、今後の動向も踏まえて解説します。
世界中の社会情勢、各国の経済対策など様々な要因が複合的に絡んでいるため、簡単に解決できるものではなく、いつまで続くか断言できない状況です。
ただ、早期に解決できるものではないため、資材価格高騰による住宅価格の値上げはこのまま続くと予想されます。
コロナウイルスやロシア・ウクライナ戦争が完全に収まったとしても、すぐに市場に効果が現れるわけではありません。
また、国際情勢が絡んでますので、日本のみが動いて解決に向かうことは非常に難しいです。特に、資源大国であるロシアとの関係が今後どのようになるのかで大きく変わります。
極端な例ですが、このどちらになるのかだけでも建築資材価格には大きな影響があります。
一つだけ、日本単独で変化を加えられることがあります。それは「金利」です。
日本の低金利政策を方向転換し、金利を上げる方向に踏み切れば円安からのダメージを軽減できる可能性があります。仮に円安が解消されると、輸入の際は有利になりますので、建築資材の価格高騰を抑えられる見込みが高いです。
日本はこれまで低金利政策を推し進めてきたので可能性は低いのですが、政策金利が上がれば、住宅ローンの金利も上がります。そうなれば、住宅の需要も減少していくことで建築資材価格も相対的に下がっていくことが予想されます。
現在の日銀総裁の任期は2023年4月までです。総裁が交代し、日本の金融政策が金利を上げる方向に変化があれば、建築資材高騰も現時点よりもいい方向に進んで行ける可能性があります。
しかし、新しくスタートした「こどもエコすまい支援事業」により脱炭素社会に向けた取り組みや、今後の住宅施策を推進すべく、省エネ住宅を普及させることが今後の焦点となりますので、決して住宅供給全体を下げることではなく、省エネ住宅を拡大させていくことが狙いとなりますので、いかにコストを抑えて省エネ住宅を量産できるかがカギとなります。
省エネ住宅についての理解や訴求力のある商品を自社のラインナップに展開することが、工務店集客において重要なことは間違いありません。省エネ住宅はZEH住宅の取り組み方が一番効率がよい形になります。詳しくは以下の資料をダウンロードしてください。
建築資材の高騰により住宅価格が上がっている状況で、住宅を購入検討しているお客様への説明についてどのようにすべきか解説します。
前述したように、世界中にまたがる複数の要因が建築資材価格の高騰を引き起こしているため、いつまで続くかわからない状況です。そのため、少し購入時期をずらし、待っていたとしても価格が下がる可能性は低いです。反対に、世界的なインフレにより価格が上がっていく可能性の方が高いです。
数年以内の住宅購入を検討しているのであれば、これ以上価格が上がる前に早めに決断し購入に踏み切る方が、数年後の金額と比べて相対的に安く済むものと考えられます。
2022年初旬に開始したこどもみらい住宅支援事業の後釜である、「こどもエコすまい支援事業」についてご存知でしょうか。
国が後押しするZEH住宅の新築・リフォームに対して補助金の2023年度版になります。
子育て世帯や若者夫婦世帯に対しての事業となっており、高い省エネ性能を持っている住宅の取得や住宅改修を支援し、省エネ投資への補助を行うものとなっています。詳しくは以下のコラムを参考にしてください。
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【工務店集客】こどもエコ住まい支援事業を上手く活用し受注を上げる方法と流れ
建築資材高騰の原因と、今後の動向について解説しました。建築資材高騰は次のことが要因です。
コロナウイルスの蔓延が引き起こしたこともありますが、他にもさまざまな要因が絡みあっているため短期間で簡単に解決できるものはありません。
コロナウイルスが完全に収束しても、ロシア・ウクライナ戦争とは関連性が低いため、別問題として取り組まなければいけません。戦争と経済制裁が終了した後に、資源大国のロシアとどのように国交が回復するのかが重要です。
建築資材高騰はいつまで続くかわかりません。そのため、工務店やハウスメーカーの方は、住宅購入を検討している方に向けて、現時点の方が将来の価格よりも安く済む可能性が高いことをわかりやすく伝えあげましょう。