住宅価格や建築コストの高騰が止まらない現状は、工務店経営者にとって、非常に悩ましい問題です。
自社のみの経営努力では対応が追い付かず、経営が圧迫されている企業も、多く存在します。
この記事では、高騰が止まらない原因として2024問題を取り上げ、高騰との関係性を解説します。
また、2025年の省エネ基準適合義務化についても、説明します。
目次
すべてのコストの高騰が止まらない原因のひとつは、2024年4月に建設業界に適用される、働き方改革です。
働き方改革により、建設業界で働く人の労働できる時間に制限が設けられ、工期や人件費などへ影響を与えます。
一人当たりの労働できる時間が減っても、工期設定が従前と変わらなかったり、発注元の理解を得られなかったりした場合、工期内にプロジェクトを終了させるためのコストは、さらに必要となります。
長時間労働ができた建設業界に対し、働き方改革が残業時間の上限を設定すると、働ける時間が少なくなります。
自然と工期は長くなりますが、短い工期を求められると、人員増加をはじめ、追加コストが発生します。
追加費用により、全体の建築コストが上昇する結果につながります。
特段の事情がない限り、月に残業できる時間は45時間で、年間は360時間です。
事情がある場合は、月の残業時間は100時間、年間は720時間まで可能ですが、複数月の平均の残業時間は80時間を超えてはいけないなど、計算が複雑になり、計算に要する手間も発生します。
出典:国土交通省「建設業における働き方改革」・厚生労働省「時間外労働の上限規制」
週休二日制が義務化されてはいませんが、残業時間が多くなった場合、職人に休んでもらわないといけないケースが考えられます。
残業時間の上限が定められたことで、残業時間の上限をこえそうな作業員は、休んでもらうよう伝えないといけません。
週休二日制は義務化されていなくても、結果的に休みが発生する可能性があります。
特に、残業時間の上限をこえて勤務させた場合、罰則が科される可能性が企業側にあるため、細心の注意も求められます。
休んでいる職人の補填をしながら、取り決めた工期を遵守するには、職人の勤務時間のマネジメントや人員の追加が必要です。
残業時間の上限と同様に、管理するコストや人員補填のコストが上乗せされ、建築コスト全体が挙げる原因になります。
公共工事では、週休二日制が進んでいる事例があるため、推進した方が企業として働き方改革に沿っているとアピールできますが、現実の運営とは乖離がある状況だと言えるでしょう。
働き方改革が導入されると、建設業界では、離職が増加する危険性があります。
職人は、月給制ではなく日給制のため、働いたら働いた分、給与にダイレクトに反映されます。
2024年問題により、残業時間も制限され、かつ2日休むことになると、収入も変動するため、大量離職の流れを作りかねません。
離職を防ぐには、2日休んだとしても1日休みだった時と変わらない給与が必要です。
また、離職防止だけではなく、そもそも人材不足の建設業界が、若手の職人を確保するには、福利厚生など働く環境整備も求められます。
企業側は、必然的に人件費を建築コストに計上するため、建築コストが高騰します。人材確保のために人件費が上がり、かつ資材価格も依然と高騰しており、天井の見えない建築コスト高騰が続いています。
建築コストの高騰は、人件費や資材価格高騰を原因とした2024年問題だけではありません。
住宅ローン控除改正を起因とする建築コスト高騰も挙げられます。
住宅ローン控除とは、ローンの残高に応じて、今まで支払った分の所得税の一部を控除する制度です。
その他の住宅より、上の住宅の方が高性能なため、建築コストはかかります。
2022年から2023年に入居 | 2024年から2025年に入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円 ※2023年までに新築の建築確認がされていた場合は2,000万円 |
2024年の改正前までは、控除の対象であった「その他の住宅」が、改正後は住宅ローン控除の対象外になります。
建設業界向けにも、国土交通省から「住宅ローン減税を受けるには省エネ性能が必須となります」という案内が出ています。
建設業界へも、省エネ基準に適合した住宅を作ろうと読み取れるでしょう。
性能が備わった高コストな住宅ではないと、控除できないという改正は、建築コストの高い住宅が増えることを意味します。
建築コストを上げる要因となる住宅ローン控除の改正ですが、長期的な目線で考えると、住まう人にとっては、エコで安全な住宅と言えます。
例えば、省エネ基準適合住宅は、断熱等性能等級が4以上で一次エネルギー消費量等級が4以上の住宅です。
国が定めた最低限の基準ではありますが、その他の住宅よりはコストが高く、その他の住宅よりも光熱費やメンテナンス費用を抑えられる住宅です。
一方、目先の安価さを求めると、光熱費が高かったり、早期のメンテナンスが必要だったりと、実は住民が苦労するケースもありえます。
最初は安くても、後から追加の費用が発生する場合もあるため、建築コストが高騰する流れを作りますが、総じて悪い制度とは言えないでしょう。
建築コストが高騰すると一概に断言せず、長期的な目線で一度考え直すことも重要です。
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2024年問題が発生している業界は、建設業だけではありません。
運送業界においても、似たような問題が発生しています。業界が異なる建設と運送ですが、非常に関連性のある業界同士で、運送業に働き方改革が導入されると、建設業にも建築コスト高騰という影響を及ぼします。
このような課題が、運送に関するコストに計上されると、追加コスト分、材料や建築コストに反映されます。
業界が異なる運送業界であっても、建築業界と深いつながりがあるため、運送業のコストアップは、建設業界のコストアップと連動します。
材料が届く時間が長くなるだけではない課題が、2024年問題では発生します。
2024年問題は、建設業界や工務店経営者を現在進行形で悩ませている課題ですが、2025年にも待ち構えている課題があります。
2025年には、省エネ基準適合が義務化され、工務店の作業量が増加し、建築コストに積み上げられる可能性が高いです。
働き方改革により、労働時間も設定され働ける時間が減少した状態で、工務店が省エネ適合基準を満たした材料を確認しないといけません。
時間をかけられない環境で、確認するための時間が増える課題が2025年には、省エネ基準適合義務化として待っています。
企業体力や業務改善、一部業務の外注化をはじめ、工夫が必要です。
2024年問題と2025年に直面する可能性がある課題に立ち向かうためには、困難を乗り切れる企業体力をつけ、業務改善や提供するサービスを工夫するなど、対策が望まれます。
本来の業務を行いながら、大きな課題へ取り組むことは大変です。
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