国土交通省は2026年10月6日、改正建築士法(令和8年法律第74号、7月公布)の施行期日を定める政令が閣議決定されたと発表しました。施行日は2027年4月1日。契約書の相互交付義務の対象が拡大され、見積書の作成が努力義務になります。あわせて一級・二級建築士の資格要件も緩和されます。本記事では、Make Houseが10月の工務店面談で見た「設計契約で成約率を上げている工務店」と「設計者1人の離脱で機能が止まりかけた工務店」の両方を手がかりに、施行までの5つの準備をまとめます。
2027年4月1日から、建築士が結ぶ設計受託契約は規模を問わず書面での契約が義務になります。工務店にとっては「無料プラン提案」をやめ、設計を有料の業務として契約する好機です。
この記事の結論(30秒で読む)
- 施行は2027年4月1日。設計受託契約の書面化義務が全ての契約に広がり、見積書作成が努力義務に。現行は延べ面積300㎡超の建築物に限られていた。
- 「プランは無料、契約してから設計料」の慣行は、書面で何を・いくらで・いつまでに設計するかを書けない以上、続けにくくなる。
- 準備は5つ:設計業務の棚卸し/設計料の明示/契約書式の整備/有料提案フローへの切り替え/設計体制の外部化。
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改正建築士法で、何が、いつから変わるのか

変わるのは「契約の適正化」と「資格要件の緩和」の2本柱。契約の方は2027年4月1日に施行されます。
| 項目 | 内容 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 法律 | 建築士法の一部を改正する法律(令和8年法律第74号) | 2026年7月公布 | 住宅産業新聞 10/19 |
| 政令 | 施行期日を定める政令・施行に必要な規定を整備する政令 | 2026年10月6日閣議決定、10月9日公布 | 同上 |
| 施行日 | 契約の適正化に関する部分 | 2027年4月1日 | 同上 |
| 書面契約 | 設計受託契約などの契約書の相互交付義務の対象を拡大(現行は延べ面積300㎡超の建築物) | 2027年4月1日〜 | 同上/建築士法 |
| 見積書 | 作成などを努力義務化 | 2027年4月1日〜 | 同上 |
| 資格要件 | 一級・二級建築士の要件緩和(人手不足対応) | 別途施行 | 同上 |
| 関連制度 | 上位住宅トップランナー制度(大手・準大手対象)も2027年4月1日運用開始 | 2027年4月1日 | 住宅産業新聞 10/13 |
契約書に何を書くかの細目は政省令・告示で示されます。本記事は10月20日時点の報道と現行法をもとにしており、公開後に細目が出た時点で追記します。
なぜ「無料プラン」は続けにくくなるのか

書面で契約するには、設計の範囲・期間・報酬を言葉にする必要があります。無料プランには、その3つがありません。
現行法でも延べ面積300㎡超の建築物では契約書の交付が義務でしたが、住宅はほぼ対象外でした。来年4月からは住宅の設計受託契約も書面化の対象に入ります。「とりあえずプランを描いて、契約後に設計料を含める」という運用は、設計の着手と契約の時点がずれるため、書面と実態が合わなくなります。
Make Houseの10月の面談でも、設計の扱いは工務店の収益を分ける要素でした。
- 三重・年間7〜8棟・坪単価115〜120万円:5万円の設計契約を結んでから提案する流れで、現在3年待ち。ローコスト層は潔く他社へ回す。
- 関東・年間30棟・社員10名:設計士は50代1名、積算・申請担当は60歳で定年延長中。契約後の仕様打合せが30回を超え、引き渡しまで10か月。
- 宮崎・家族経営:個人外注の設計士が離脱し、設計・プラン打合せの体制が崩れる寸前。年間1棟あたり約60万円の外注費と同額で設計を丸ごと外部化できる仕組みを検討中。
- 高額物件(1億円超)が好調な工務店:社内と協力事務所の構造設計ラインが逼迫し、構造計算の外注を試行。
設計を「営業の付属」として無料で扱ってきた工務店ほど、書面化で範囲と報酬を言語化する負担が大きくなります。逆に、設計契約を先に結ぶ工務店は、すでに書面化を終えています。
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施行までの5つの準備

準備1:設計業務を棚卸しする(何を設計と呼ぶか)
基本設計・実施設計・構造計算・温熱計算・確認申請・監理。それぞれ誰が・何日で・いくらで行っているかを一覧にします。 書面契約の第一歩は、自社の設計がどこからどこまでかを決めることです。「打合せ30回」の工務店は、仕様決めが設計に含まれているのか、営業に含まれているのかも曖昧なまま走っています。
準備2:設計料を明示する
設計料は「契約金額の○%」ではなく、業務ごとの金額で示します。 基本設計○万円、実施設計○万円、構造計算○万円、申請○万円。業務別に分けると、見積書の努力義務にもそのまま対応できます。相場の考え方は当研究所の「工務店の設計提案費用とは?」で解説しています。
準備3:契約書式を整える
四会連合協定の建築設計・監理等業務委託契約書式を基準に、自社用の設計受託契約書を今年度中に用意します。 重要事項説明(建築士法第24条の7)とセットで、契約前に説明→書面交付→着手の順番を社内ルールにします。来年4月に慌てて書式を探すより、今年の案件で試す方が確実です。
準備4:提案フローを「設計契約→提案」に切り替える
初回面談→資金計画→設計契約(少額)→基本設計の提案、の順に組み替えます。 三重の工務店のように設計契約5万円でも、「お金を払って設計を依頼した」お客様は検討から離脱しにくくなります。無料プランで3社比較されるより、設計契約で1社に絞られる方が、成約率も粗利も守れます。
準備5:設計体制を書面に耐える形にする
設計者1人の離脱で契約が履行できない体制では、書面契約そのものがリスクになります。 基本設計・構造計算・確認申請を外部化し、社内の設計者を「お客様と話す時間」に集中させる。Make Houseでは設計・構造・確認申請の外部化を標準とし、2026年9月からは基本設計にブラウザで閲覧できるWeb 3Dモデルを納品しています。書面に「納品物」として書ける成果物があることが、契約の前提になります。
設計契約を切り出すときの伝え方(テンプレート)

- 初回面談で:「来年4月から法律で設計の契約は書面で結ぶことになります。当社はすでに、基本設計を○万円でお引き受けし、図面・3Dモデル・概算見積を納品する形にしています。」
- 無料プランを求められたら:「無料のプランは、設計の範囲と責任が決められないため、当社ではお出ししていません。代わりに、設計料の中で構造と温熱の検討まで行い、見積のぶれをなくします。」
- 他社が無料と言っている場合:「無料の設計は、契約後の設計料や打合せの回数に姿を変えて戻ってきます。当社は最初に金額と回数を書面でお約束します。」



よくある質問
住宅の設計でも契約書が必要になるのですか?
はい。現行は延べ面積300㎡超の建築物に限られていた契約書の相互交付義務が、2027年4月1日から拡大されます。細目は政省令で示されるため、公表後に自社の書式へ反映してください。
見積書は必ず作らなければなりませんか?
報道では見積書の作成は「努力義務」です。ただし、書面契約で報酬を明示する以上、業務別の見積書を作る方が実務は進めやすくなります。
設計を有料にするとお客様が減りませんか?
検討の浅いお客様は減り、本気のお客様が残ります。面談では設計契約5万円で3年待ちの工務店があり、「減る」より「絞れる」と考える方が実態に合います。
社内に建築士がいない工務店はどうすればよいですか?
設計を外部の建築士事務所に委託し、工務店は工事請負契約に専念する体制にします。設計受託契約は建築士事務所が結ぶため、外部化は書面化の対策にもなります。
まとめ
- 改正建築士法は2027年4月1日施行。設計受託契約の書面化義務が全ての契約に広がり、見積書作成が努力義務に。
- 無料プラン提案は、範囲・期間・報酬を書面にできないため続けにくい。設計契約を先に結ぶ工務店が有利になる。
- 棚卸し/設計料の明示/契約書式/有料提案フロー/外部化の5つを、今年度の案件で先に試す。
設計・構造・確認申請の外部化と、基本設計のWeb 3Dモデル納品を標準にしており、書面契約に書ける「納品物」と「期間」を会員工務店に提供しています。貴社の設計業務の棚卸しと設計料の切り出しを、15分の面談でご一緒に整理します。
出典
- 住宅産業新聞 国交省、2027年4月に改正建築士法施行=全ての設計受託契約で書面契約義務化(10/19)
- 住宅産業新聞 「上位住宅トップランナー制度」設立=2027年4月運用開始(10/13)
- 国土交通省 報道発表(建築士法関連・2026年10月)
- 住宅産業新聞 BIMデータ審査の基本構想(2029年春運用)(10/19)
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