現在、世界各国において温暖化や化石資源の減少などを懸念して、省エネに関する対策を行っている国があります。
日本も例外ではなく、取り組みの一例として2025年に「省エネ基準」と呼ばれるものが義務化されます。
しかし、省エネ基準を理解している人は、多くないと思います。
そこで、今回は2025年に義務化される省エネ基準について詳細を解説します。
目次
省エネ基準とは、平成28年に国が定めた「省エネルギー基準」を指すもので、構想自体は10年以上前からありました。
しかし、技術面で対応できない工務店が多くあったり、景気の後退が懸念されていたことから、しばらく見送られていました。
それからしばらく時が経ち、建物が省エネ基準に適合しているかの説明義務が2021年4月に発表されました。
下記にて、省エネ基準に含まれる「外皮性能」と「一次エネルギー消費量」をご説明します。
外皮性能とは、壁や床、天井、窓といった建物の外回りの省エネ性能を指すものです。
外皮性能の評価は平均熱貫流率の「UA値」と、冷房期の平均日射熱取得率の「ηAC値」といった2つの指標で評価されます。
UA値は1㎡辺りの外皮面積における、住宅内部から壁や床、天井、窓、窓などの開口部を通過して外部へ漏れ出す熱量で、下記の数式で算出できます。
UA値=建物から漏れ出す熱量の合計(W/K)/外皮面積(㎡)
こちらの値が低いほど、外部に漏れ出す熱量が少ないため、省エネルギー性能が高いと言えます。
ηAC値は、1㎡辺りの外皮面積における、窓やそれ以外から直接侵入する日射による熱を、冷房期間で平均したもので、下記の数式で算出できます。
ηAC値=建物に侵入した日射による熱量(W)/外皮面積(㎡)
こちらの値が小さいほど住宅内に侵入する熱量が少ないことが示されるため、高い冷房効果があると言えます。
UA値とηAC値は下記のように全国を8つの地域に区分して、それぞれの地域に基準値が設けられています。
ただし、同一都道府県内でも地域区分が異なる場合もあります。
一次エネルギー消費量とは、化石燃料、原子力燃料、水力、太陽光など自然から得られるエネルギーを指します。
これらを変換・加工して得られる電気や灯油、都市ガスといったエネルギーは二次エネルギーと呼ばれます。
一般的に家庭では二次エネルギー消費されますが、単位が異なるため、一次エネルギー消費量として統一して消費量が算出されます。
一次エネルギー消費量の数値が小さいほど、省エネ性能が高い住宅であると言えます。
省エネに関する言葉のなかには、「カーボンニュートラル」と呼ばれるものがあります。
こちらは2020年10月に主将から発表された声明のひとつで、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする、脱炭素社会を実現するというものです。
ただし、ただちに温室効果ガスをゼロにすることはできないので、段階を分けて2030年には温室効果ガスの排出量を50%にする方針が立てられています。
カーボンニュートラルを宣言した背景には、下記が挙げられます。
将来的に、これからの時代を生きる子供たちが安心して暮らせる世界を残すためには、持続可能な社会を実現する必要があります。
また、環境問題に取り組まない場合、投資家や消費者に選ばれず、競争に負けてしまいます。
このような背景があるため、日本でもカーボンニュートラルの実現を目指しています。
このように、日本では省エネ基準を設定したり、カーボンニュートラルを掲げたりすることで環境問題に取り組んでいます。
省エネ基準には下記のような等級が設けられており、4が最高等級です。
しかし、日本の省エネ基準は平成11年に定められた「次世代省エネ基準」と呼ばれるものとほぼ変わっていません。
省エネ基準の位置づけとしては必ず守らなければならない義務ではなく、努力目標のポジションだったことも、省エネ基準に積極的に取り組まなかった要因のひとつです。
そのため、日本では2022年4月1日に下記のように5~7の更なる等級を設け、省エネ基準の順守を義務化しました。
2023年の法改正により、これまで最高等級だった4がすべての新築住宅に義務付けられるようになり、2025年以降は最低等級になるよう、基準が底上げされるようになりました。
そのため、2025年以降は下記の基準が制定されます。
2022年4月に新設された等級5はZEH基準と呼ばれるもので、太陽光パネルなどの設備と組み合わせて光熱費0を実現するレベルの断熱性能を指すものです。
等級6~7には一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」が提唱した「HEAT20」と呼ばれる断熱基準が設けられています。
東京都では2022年5月に、一戸建てを含む新築建物に太陽光パネルの設置を義務付けるなど、積極的に環境問題に取り組むようになりました。
2022年6月17日に発表された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」では、原則すべての新築住宅や建物に省エネ基準が義務付けられました。
建物は300㎡未満の小規模、301~1,999㎡の中規模、2,000㎡以上の大規模の3種類があり、それぞれ説明義務や適合義務、届け出義務と呼ばれるものが設けられていました。
下記、法改正前後の義務の変化です。
つまり、あらゆる建物に対して省エネ基準を適用する必要があるように改正されました。
省エネ格差とは、これまで最高等級だった4が最低等級となることにより、適していない住宅の価値が相対的に低く評価されることを指します。
たとえば、断熱性が高いZEH住宅とそれ以外の住宅では、全社の方が高い価値を得ます。
下記、省エネ格差に含まれる評価の一覧です。
日本には四季があるため、季節ごとに冷暖房を使用します。
省エネ基準が高い住宅では、光熱費が低く抑えられるため、長期間で見ると大きな差が生じます。
また、今後太陽光パネルなどの設備が標準搭載されると、その格差は大きくなることが懸念されます。
そのため、光熱費格差は建物ごとに消費する光熱費の大きさを指すものです。
冬場において、室内との温度差で心臓や血管が疾患を起こす「ヒートショック」の懸念があります。
断熱性能が高い物件ではヒートショックが起きる可能性は低くなりますが、断熱性能が低いと発生する可能性が高くなるため、健康面でも格差が生じます。
省エネ基準は、住宅ローンや税制、補助金でも差が生じます。
35年間一定の金利を支払うことで利用できるローンである「フラット35」も見直しが行われ、省エネ性能が高いほど金利的な優遇が大きくなりました。
省エネ基準で高い等級を獲得している物件は、資産価値としても高い評価を得られます。
かつて耐震基準が引き上げられた時も、それに対応していない家屋は相対的に価値が下げられました。
価値が低い物件は買い手が付きづらく、ローンが通りにくいなどの事情から、通常よりも低い相場で売買がされるようになることから、資産価値としても格差が生じます。
一次エネルギー消費量をゼロにする家屋であるZEHやビルを指すZEBは、省エネ基準のひとつに含まれます。
その他にも下記のようにさまざまな目的を持った省エネ住宅があります。
LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)とは、建設時や入居時、廃墟時に発生するCO2を可能な限り取り除き、太陽光発電など再生エネルギーを利用してCO2の収支をマイナスにする取り組みがされた住宅です。
LCCM住宅が実装されることにより、CO2の総量を減らせるため、温暖化を防ぐことができます。
認定長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で使用するために講じられた住宅です。
認定を受けるためには下記の基準をクリアしている必要があります。
認定低酸素住宅とは、CO2の排出量をおさえるための対策が取られた、環境に配慮した住宅です。
LCCM住宅と混同されがちですが、こちらはCO2の排出量をゼロにするのでは無く、ZEHと同水準でCO2の排出量を減らすことが目的です。
建築物省エネ法第35条に係る建築物エネルギー消費性能向上計画の認定が誘導基準に適合している旨を所管行政庁(都道府県、市又は区)が認定した住宅です。
新築や改築、修繕した家屋が対象となり、下記の基準に適合している必要があります。
スマートハウスはIT技術を使って家電を制御し、エネルギー消費を押さえる住宅を指します。
自宅でエネルギーの創造、蓄積、使用ができ、CO2の削減にも貢献します。
類似する言葉には「スマートホーム」と呼ばれるものがありますが、こちらはIT技術を使って家電同士をネットワークで接続し、快適な生活を送ることを指します。
今回は、省エネ基準についてご説明しました。
これまで日本の省エネ基準は先進国で最低でしたが、近年の法改正によって以前よりも基準が引き上げられ、基準を満たすことが義務付けられるようになりました。
工務店においては今後、省エネ基準を満たす家屋の建設が必須となるため、技術の向上や基準を満たす商品の開発が求められます。
お客様が快適に生活できるだけではなく、高い資産価値を持つ住宅を提供しましょう。
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