建築業界の人材育成は、少子高齢化や若者の建築業界離れの影響で、次世代の担い手を育てることが難しい状況にあります。
とりわけ地方では、こうした問題が著しく進んでいるため、工務店経営者による対応策の検討・実践を一早く行うことが欠かせません。
そこで注目されているのが、自社で大工を雇う「社員大工」の採用です。
本記事では、社員大工がもたらすメリットと、工務店が直面する課題を乗り越えるためのポイントについてお伝えします。
さっそく、社員大工について見ていきましょう。
この記事のポイント
目次
「社員大工」とは、工務店が直接雇用する大工のことを指します。
社員大工が注目されている理由は大きく2つあります。
①将来的な税負担
②高齢化と担い手不足
順に説明します。
工務店は、個人事業主の一人親方・大工に業務を委託することが一般的です。
しかし、インボイス制度が始まったことで、工務店が「免税事業者」のままである一人親方・大工と契約を続けた場合、取引にかかる消費税が「仕入れ額控除の対象外」となってしまいます。
このため、工務店の税負担増加につながる可能性があります。
なお、現時点では、上述の税負担について「特例の経過措置」が行われていますが、将来的な工務店の税負担増加は避けられない状況であるといえます。
そうしたことから、免税事業者のままである一人親方・大工に仕事を発注するのではなく、自社の社員として雇用するケースが注目されているのです。
国土交通省は、令和3年における調査で、建設業従事者における約36%が55歳以上であり、29歳以下は約12%であることを報告しています。(出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」)
このことから、工務店が直面する人手不足・高齢化は、次世代への技術継承の観点で大きな課題といえます。今後の工務店では、定年による大量退職に備え、中長期的な観点からの人材確保も必要となります。
社員大工としての雇用が実現できれば、大工の担い手の確保と育成を同時に行うことが可能となります。だからこそ社員大工は、工務店の大工不足に備える1つの選択肢として期待されているのです。
では、社員大工の雇用における具体的なメリットとは何なのでしょうか。
次で深く掘り下げていきます。
社員大工の雇用は、工務店にとって多くのメリットをもたらします。
最大の利点は、品質の高い施工を安定して顧客に提供できることです。社員大工が在籍することで、経験と技術が蓄積され、それが直接的に施工品質の向上につながります。
また、社員の採用にも好影響をもたらすと考えられます。固定給与や社会保険等の充実は、若手の技術者が安心して入職し、長く勤めることが可能になります。この結果、技能の伝承もスムーズに行える環境づくりの構築が期待されます。
施工管理の効率化も重要なメリットの1つです。社員大工は、工務店の方針や目指す品質基準を深く理解しているため、現場での判断が迅速になり、作業の効率が上がります。
さらに、工務店としての競争力を高めることにもつながります。社員大工による確かな技術と、それを背景とした信頼性は、顧客にとって大きな安心材料となり、他の工務店との差別化につながります。
このようにたくさんのメリットがある社員大工ですが、雇用した社員大工が充実して働けるような労働環境も大切となります。次は、成功へのステップを説明します。
工務店が社員大工の採用を成功させるためには、適切な採用戦略が欠かせません。
まず、社員大工への継続的な教育と技能の伝承が重要です。
社員大工として採用した後は、定期的な研修や技術講座を通じて、常に最新の技術知識を身につける機会を整えることが大切となります。これにより、社員大工のスキルアップとモチベーションの継続につながり、工務店全体の技術力向上にも貢献します。
また、社員大工が働きやすい環境整備も必要となります。
たとえば、適切な労働時間の管理、休暇の取得促進、安全な作業環境の提供などが挙げられます。働く環境がきちんと整備されていることで、社員大工は安心して仕事に専念することができ、その結果として高い品質の施工を提供することが可能になります。
こうしたステップを事前に検討・用意しておくことで、社員大工の採用後も、スムーズな育成が可能となります。では、社員大工という採用枠を導入するにあたって、どのような注意点があるのでしょうか。
次章では、社員大工枠の導入における課題を説明します。
社員大工の採用枠の導入には多くのメリットがある一方で、いくつかの課題も存在します。
まず、コストの面での懸念が大きいといえます。社員大工を雇用するということは、工務店にとって固定費が増加することを意味します。そのため、仕事の量が一定しない建築業界においては、閑散期における固定コストの問題に対処しなければなりません。
また、工務店では、効率的な仕事の割り振りが必要になります。社員大工のスキルや経験を考慮して、最適なプロジェクトに振り分けることで、大工の能力を最大限に発揮させることができます。
さらに、ダウンタイムを有効活用するために、社員大工には研修参加や新しい技術の習得など、自己成長につながる活動を促すことも1つの方法です。
他方、工務店が固定費の増加に対応するためには、工務店全体の収益性の向上も必要になります。これには、社員大工による高品質な施工を顧客にアピールし、受注機会の拡大を図ることが改善策の1つとなります。高い品質と信頼性は、長期的な顧客関係の構築に寄与し、結果として収益性の向上につながります。
以上のことから、社員大工の導入は、工務店にとって大きな転換点となる可能性があります。さまざまな課題に適切に対応することで、社員大工は、工務店の強力な資産となりえるのです。
今回は、工務店が直面する課題と「社員大工」の可能性についてお伝えしました。
工務店が社員大工の導入を成功させるためのポイントは、短期的な視点ではなく、長期的な視野での戦略的な計画と運営にあります。社員大工との強い関係構築を通じて、技術力の向上と、品質の高い建築の基盤づくりが期待されます。
そして社員大工達の育成の成功は、経営課題の解決のみならず、工務店のブランド価値を高め、安定した事業成長により貢献することにもつながります。
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