今、日本の住宅業界はウッドショックにより厳しい状況にあります。この記事では、ウッドショックとは何なのか、ウッドショックのそもそもの原因と日本の住宅業界への影響はどうなるのか、そして今後の見通しについて解説していきます。終わりの見えない不安な中、どうしていくか決めるための判断材料としてみてください。
ウッドショックとは、木材の需要が高まり、木材の価格が高騰している状態のことです。日本は四季があり、湿気が多い国ですから、木造住宅が人気です。そのため、特に打撃を受けているのが日本の住宅業界なのです。ウッドショックによってどういったことが起こっているのか以下にまとめました。
ウッドショックは、日本だけでなく海外でも起こっています。日本は林業が盛んですが、しかし過去には高い国産の木材よりも、安く手に入る海外の木材の輸入に頼ってきました。こうした背景から、今日本は輸入木材に頼れない状況に陥っています。
急に国内の木材を利用しようとしても、材料はあっても人手が足りなかったり、そもそも木がまだ成長していないなどの理由で木材の需要をカバーできないのです。また、これからマイホームを購入しようとしている方の中には、高い国産の木材を使った家作りを望んでいない人もいます。そうすると、家を購入しようという動きが鈍り、購入者も建築業界もより早く輸入木材が来ないかと焦るようになります。
現在、木材調達の目途が立っていない状況です。ウッドショックがいつ終わるかおおよそでもわかればいいのですが、それがわからないためいつになったら終わるのか、不安が続いています。
木材が調達できないということは木造住宅も作れないということになり、特に木造をおすすめしているハウスメーカーや工務店はどうすることもできません。木が育つには大変な時間がかかるため、今からできることがないのです。
逆に、鉄筋コンクリート造をおすすめしているハウスメーカーや工務店は木材が少なくても作業に取り掛かれるため、家の構造によって明暗が分かれています。
家を建てる際にメインとなる木材が少ないと、木材が届くのが遅れるため工期が長引くことがあります。中には家がなかなか建たないというケースも。家の購入者も、契約したのに家が建たないとなればショックですが、しかしその怒りをハウスメーカーや工務店に向けるわけにもいかず悶々とした日々を送ることとなります。
幸いと言うには厳しい状況ですが、しかし、家は今すぐ買わなければいけない必需品ではありません。ですから、ウッドショックの影響を知っている方は家の購入を先延ばしにしようと計画を変更することもあります。
今回のウッドショックは、そもそもなぜ起こったのでしょうか。原因は複数あるので、その中でも大きな原因を2つご紹介していきます。また、日本の住宅業界が受ける影響についても解説します。
ウッドショックが起こった大きな原因のひとつは、新型コロナウイルスによる人手不足です。アメリカやカナダは木材を多く輸出している国ですが、そこでも一時期仕事ができない状況が続きました。材料はあっても、木材を輸入するのに必要な労働力がストップしてしまったのです。よって、今回のウッドショックは急な気候変動などで木材自体が減ったというような原因はありません。
また、新型コロナウイルスにより、世界中の人々はお店に足を運ばず、オンラインで買い物をすることが増えました。このライフスタイルの変化は一見するとウッドショックに無関係に思えるでしょう。しかし、物流が増えたことによりコンテナが少なくなってしまい、木材を運ぶ手段が減ってしまいました。ここでも、やはり木材という商品自体はあるのに、なかなか求める人の元まで届かないという現象が起きたのです。
アメリカでは、おうち時間が増えたことによりより快適な家を作ろうとする動きが活発になりました。海外では大々的にDIYをすることが多いため、個人的に木材を購入する人もいれば、業者により良い家を建ててほしいと依頼をする声も増えたのです。
アメリカは日本にとって、木材を提供してくれる良きパートナーです。輸入した木材はアメリカ産のものも多いため、アメリカ国内で住宅需要が増えたことは大きな打撃となったわけです。国内で需要が高いなら、国外へ輸出する分の木材は減ります。他の国でも似たような現象が起こり、世界的に木材の消費量が増えました。
日本の住宅業界の多くは、木造住宅を提供しています。海外だと石やレンガを用いることも多いですが、日本は気候が1年の間に変わり湿気が多いため、四季に対応できる木造住宅の方が都合が良いのです。また、鉄筋コンクリート造よりも木造住宅の方が値段が安いことや、木のぬくもりを感じたいという人が多いこともあり木造住宅が人気です。
そんな日本で木造住宅を販売しているハウスメーカーや工務店は、現在耐え忍ぶ日々を送っています。一度建てたら何十年と住むことが前提の家に妥協は許されません。一生に一度の買い物になることがほとんどですから、マイホーム作りの計画を変更しても良いという購入者もそう多くはいません。今のウッドショックが過ぎ去るまで家は我慢する世帯もあるため、住宅業界は注文住宅の営業が上手く行きづらい状況です。
参考:経済産業省|新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響
現在起こっているウッドショック、今後の見通しはどうなっているのでしょうか。いつごろ木材が使えるようになるのか、元の状況に戻るのかわかるものなのでしょうか。今の時点で立っている見通しについてご紹介します。
現在、ハウスメーカーや工務店の一部では木材価格は当面の間元には戻らないのではないかと予測しています。新型コロナウイルスが仮に終息したとしても、別の問題が出てくるからです。その問題とは、アメリカで家を建てる「Z世代(25〜34歳)」「ミレニアル世代(35〜44歳)」が増えていることです。
アメリカは世界規模で見ても人口は多いですし、世代的に家を建てたいと思う人が増えているなら相当な木材が必要です。地域にもよりますが、アメリカの一軒家は日本と比べ物にならないくらい大きく建てられるところもあります。よく、テレビなどでプール付きの豪邸を見ませんか?それでもアメリカの広大な敷地は安いのです。
ロシアは、日本を非友好国として木材の輸出を制限しています。日本はロシアからは多くの木材を輸入していませんが、他の国でロシアに頼っているところはあります。ですから、ロシア・ウクライナ情勢が落ち着けば、木材がロシアから輸出され、世界的に見ればウッドショックが緩和するという見方もできます。
ただ、現状ロシアとウクライナの戦争が落ち着くのはまだ見通しが立っておらず、思いのほかウクライナが耐え忍んだことで戦争期間は長くなっています。現在はロシアの士気が下がり、ウクライナが優勢という見込みもありますが、終息は未だ明確になっていません。
ウッドショックの原因にもなっている新型コロナウイルスですが、感染状況が落ち着いたら木材価格も安定し始めるのではという見方もあります。まだウイルスが未知のものだったころはロックダウンなどがあり、仕事ができないこともありました。しかし、現在は海外ではマスクを外し、人々の生活はwithコロナになってきています。ですから労働力が強力に制限されているわけではありません。
それでも、感染対策が完全になくなったわけではありません。そして、新型コロナウイルスは次々と変化していきましたから、これからも油断はできない状況です。いつ終息と言われるかわからないため、ウッドショックの見通しは難しいでしょう。
参考:経済産業省|新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響
ウッドショックで木材価格が高騰し、日本の住宅業界が打撃を受けています。終わりの見通しは現在ついていませんが、原因のひとつとなった新型コロナウイルスの終息がひとつの指標になりそうです。日本は林業が盛んですが、自給率は37%といまいち伸び悩んでいるので国内での対策も必要になってきそうです。