現在、政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素化社会の実現を目指しています。
今後は、省エネルギーや再生エネルギーに取り組み、挑戦する企業に対して、政府が後押しをする可能性が高いと考えられます。
しかし、事務所ビルなどの業務部門においては、依然として大きなエネルギーが消費されているのが現状です。
そこで注目されているのが「ZEB(ゼブ)」です。
本コラムでは、「ZEB」に関する基礎知識やZEB化を行うメリットを解説します。
目次
上述の通り政府は2020年10月に、2050年にまでにカーボンニュートラル、脱炭素化社会の実現を宣言しました。
その目標達成のために、現在、脱炭素化社会に向けて省エネ基準の強化が行われています。
2025年には改正建物省エネ法や改正建築基準法が施行され、「省エネ基準適合」が義務化されることが決まりました。
2030年にはZEH(ゼッチ)やZEB(ゼブ)水準の省エネ性能を持つ新築建物で普及させ、2050年にはZEH・ZEB水準の確保をストックの平均に拡大するというロードマップを描いています。
このように、2050年の目標達成に向けて動きを加速させている状況です。
大規模木造非住宅に関しては、2024年4月から省エネ基準が引き上げられることが決まっており、用途ごとに以下の3段階設定されています。
基準は引き上げられていますが、所管行政庁または登録省エネ判定機関による省エネ基準への適合性判定を受け、建築確認の際に適合性判定通知書を提出するという手続きについては、これまでと何ら変わりません。
それでは、ZEBとはどのようなものなのでしょうか?
ZEBとは、「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称を言います。
ZEBは、年間の基準値に対する一次エネルギー消費の収支を、高効率・高断熱などの省エネルギー技術と、太陽光発電などに代表される創エネルギー技術でゼロにすることを目指した建物です。
ZEHと似ているように感じますが、ZEBはビルや工場、学校、病院などの大型建物を対象としています。
一方、ZEH一般住宅を対象としている点で、ZEBとは異なります。
ZEBが消費収支をゼロにすることを目指している一次エネルギーとは、石油や石炭、天然ガス、太陽光など、自然から得られるエネルギーのことです。
本来、消費者が利用するエネルギーは、電気や燃料などに加工された2次エネルギーですが、環境負荷を考える際には、一次エネルギーのほうがわかりやすいとされており、こちらが使われいます。
そして基準値とは、用途や設備、地域などによって決まる標準的な一次エネルギー消費量を算出したものです。
経済産業省は、ZEBを下記の4種類に分け企業に対策を促しています。
それぞれの詳しい定義については、環境省の「ZEB PORTAL」をご確認ください。
ZEB化を政府が推し進める中、近年注目を集めているのが「木造ZEB」です。
木のぬくもりや香りが、利用する人々の五感に働きかけ、リラックス効果など健康面においてもメリットがあることが、研究により明らかになりつつあります。
また、地域木材を利用することや、木造建造物の省エネ性能の高さは、環境保全につながることから大きな注目を集めているのです。
木造の非住宅を作ることは、持続可能な社会を目指すSDGsの取り組みにもつながっています。
ここからは、木造非住宅でZEB化を進めるメリットについて解説します。
木造建築物のメリットとしてあげられるのが、熱伝導率の低さです。
ビルなどを建てる際に利用される鉄筋と比べると、木は熱伝導率が低いことことが知られています。
熱伝導率が低いということは、断熱性能が高いことを意味します。
断熱性能が高いということは、外の熱を伝えにくいだけでなく、中の熱も外に伝えにくいため、室内の温度を一定に保ちやすいということです。
室内の温度を一定に保つことができると、空調の効率が良くなり、省エネ効果が期待できます。
また、空調が効きすぎると身体への負担が大きくなりますが、空調を下げすぎることもないので、健康的に過ごせるというメリットもあります。
このように、木造非住宅を建設し、ZEBと組みわせることによって、より光熱費の削減も期待できるのです。
近年、働き方改革などの労働環境、労働生産性の向上に向けた働きが進められてきました。
この動きと合わせて、健康・快適性や生産性の向上など、建物の中で働く人や建物を訪れる人にとっての空間の質についても重視される傾向が見られます。
木造建築物によるメリットとして、木は、紫外線を吸収し目に優しいこと、疲れにくいこと、集中しやすいこと、風邪を引きにくくなるなどの効果が証明されています。
また、クッション性があるため、衝撃を和らげる効果もあり、施設によっては、転倒しやすい子どもや高齢者にとって、大怪我になるリスクを下げることが可能です。
また、木のぬくもりや香りによるリラックス効果も期待され、生産性向上にも役立つと言えるでしょう。
空間の質の向上による健康・快適性、生産性の向上効果を定量化して、メリットを金額換算するような研究も行われています。
その効果は、光熱費の削減よりも大きいと言われているため、今後はより一層、空間の質を重視する傾向は強くなると言えるでしょう。
木造建築にすることによって、木の美しさを見せることを目的とした施設を建設することができます。
木の美しさが感じられることで、外観や空間に対してだけでなく、企業自体にも好印象を持つようになるでしょう。
近年は、SDGsを積極的に行なっている、環境に優しい行動を行なっている企業に対して、評価を行う機運が高まってきています。
政府だけでなく、一般の人々も環境問題に取り組む企業を応援する傾向にありますので、大きなチャンス言えるでしょう。
さらにZEB化を行うことで、建築物のエネルギー性能が高まることになり、それにともない、建物自体の不動産価値も高まることになります。
また、上記の通り、企業イメージも良くなるため、不動産価値のみならず、企業価値も高まる可能性があります。
建造物の防災については、耐震性が重要であることは以前から認識されていた観点です。
木造建築物の利点として、木材の引っ張り強度及び曲げの強度は鉄やコンクリートに比べ非常に強いことです。
これら引っ張り強度と曲げの強度についてはすでに、実証済みですので、木造建築物は耐震性・耐久性があるといえます。
もちろん、基礎工事の緻密(ちみつ)性が重要になってきますが、接合金具をはじめ、最新技術を用いることで、さらに耐震性の向が見込めるでしょう。
これに創エネルギー設備を備えていれば、災害などの非常時にも一定のエネルギーを自給自足で賄うことができるため、事業継続性が向上します。
また、創エネルギー設備を備えていない場合でも、高い断熱性能やエネルギー消費効率の高い設備などにより、建物の機能維持に必要なエネルギー需要を抑えることで、非常時のエネルギー自立性の向上にもつながるのです。
近年、大企業を中心に自社の施設を建設する際には、原則としてZEB化を行うという傾向にあります。
しかし、非住宅分野で木造ZEBを広めるためには、いくつかの課題があります。
例えば、ZEBの認知度を高める必要性です。事業者はもちろん、建築主の双方がZEB化の意義を共有しなくてはいけません。
また、建築主側の意識や行動改革も求められます。地球環境への意識が高まり、SDGsへの取り組みが広まる中、環境に優しい建築物を求める声が高まっていることを意識する必要があるでしょう。
さらに、ZEBを実現できる企業が少ない点も課題です。制度が始まったばかりのため、設計手法やや技術、コストなどの情報についての共有が難しく、現状として、ZEBを実現できる企業が限られています。
その他にも課題はありますが、これらの課題をクリアしていくことで、非住宅分野での木造ZEB化の動きは大きく前進すると思われます。
脱炭素化社会への取り組みはすでに動き出しました。来年からは、大規模木造非住宅に関しては省エネ基準が引き上げられることも決まっています。
今後は、住宅だけでなく、学校や病院、商業施設についても脱炭素化の動きが出てくるのは間違いないでしょう。
その動きに取り残されないよう、ZEBという考え方も多くの工務店で共有し、脱炭素化社会実現を目指す企業イメージを構することは、非住宅分野だけでなく、住宅分野での集客にもメリットが生まれる可能性があります。
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