プレカット価格の高騰はいつまで続く?工務店側ができる対策はある?こんな疑問を抱えている方も多いでしょう。
諸外国での木材需要や輸出コストの増加などの要因により、プレカット価格が高騰しました。現在も輸出材の高騰は止まらず、国内材への切り替えなどの対策が求められます。
この記事では、プレカット価格高騰の原因や今後の見通し、具体的な対策まで詳しく解説します。
近年プレカット価格が上昇しているのは、アメリカや中国で木材価格が上昇したことによる「ウッドショック」が原因です。まずはどのような背景でウッドショックが起こったのか見ていきましょう。
ウッドショックの発端は、新型コロナウイルスによって建築需要が増えたことによる世界的な木材不足です。
例えばアメリカでは、コロナ禍でリモートワークが促進されたことで住宅を購入する人が増え、新築やリフォームのため木材需要が増加しました。
同じく中国でも、コロナ禍で落ち込んだ経済を回復させるため建築を増進する流れが進んでおり、木材不足に陥りました。
ここまでは諸外国の話ですが、もちろん日本にも大きな影響があります。
2022年から始まったロシア・ウクライナ間の戦争の影響で、ロシアは非友好国に対するチップ、丸太、単板の輸出禁止を発表しました。
ロシアからの輸入材の数量は、日本の製材輸入量の約16%を占めます。特に単板に関してはロシアからの輸入が8割もあるため厳しい状況です。
輸出禁止は2022年末までとされていますが、戦争がどのような結果になるのか未知数で、今後永続的に輸入ができなくなる可能性も考えられます。
参考:林野庁
輸入コストが上がっているのもウッドショックの一因です。
コロナ禍で輸送量が減少したことで輸送会社の多くがコンテナを売却し、コンテナ不足に陥りました。さらに、2021年3月にはスエズ運河で大型コンテナ船が座礁したことが追い打ちとなっています。
日本の木材自給率は低く、2020年現在でも4割ほどしかありません。ウッドショックが始まる前は、さらに自給率が低い状態でした。
令和2年(2020年)の木材自給率は41.8%となりました。前年に比較すると4.0ポイント上昇しました。木材自給率は、平成23年から10年連続で上昇しています。
木材の多くを輸入に頼ってきた日本にとって、輸入コストの増加もかなりの痛手です。
参考:林野庁
輸入材の価格が上がっている以上、日本では国産材への切り替えが求められてます。しかし、そう簡単に国産材を増やせないのも事実です。
日本の林業は労働力不足で、さらに国産材では今まで通りのコストで同じ性能を維持することができないのが悩みどころ。
現状では多くの工務店が新しい設計・工法を模索し、国からも国産材への転換支援事業が開始されるなど、大きな課題となっています。
世界的な需要急増による輸入コストの増加、さらに国内での国産材の調達の難しさが合わさり、木材価格の高騰が続いているのです。
多くの工務店やハウスメーカーの方は、プレカット価格が今後も上昇を続けるのか気になるはず。まずは現状の価格推移を見ていきましょう。
輸入材の価格は、2021年から大幅に増加しています。木材や木製品等は前年同月から73%も高騰しており、さらに現在も価格上昇が続いています。
続いて国内材は、木材の種類によって上昇率が異なります。たとえばマツやスギなどは比較的ゆるやかに上昇しているのに対し、ヒノキは2021年末には前年比の62%も上昇しました。
輸入材の価格高騰は止まりそうにありません。国産材も価格は上昇していますが、比較的ゆるやかで現在は落ち着いてきています。今後は、国産材導入が大きな課題となるでしょう。
参考:経済産業省
木材の種類にもよりますが、プレカット価格の上昇は止められない事実。工務店ができる価格抑制の方法は以下の3つです。
ウッドショックの根本的原因は、輸入材への頼りすぎです。輸入材の割合を減らし、国産材を普及させるのが喫緊の課題だと言えるでしょう。
ウッドショック以前よりもプレカット価格は高くなってしまいますが、それでも輸入材と比べればまだコストを抑えられます。
国でもプレカット価格高騰は問題視されており、2021年6月には「国産材利用を促すための改正公共建築物等木材利用促進法」が成立しました。課題はたくさんありますが、国産材への転換は避けられません。
国産材への変更でネックとなるのが梁です。
近年では、輸入材が高騰したことから国産材の活用方法が模索されており、梁の架け方を一工夫すれば国産材でも必要な強度を確保できることがわかりました。
構造次第では、これまで強度不足とされてきたスギ材を利用することでコストを抑えられます。このように、今後は木材の供給状況も視野に入れた設計が求められるでしょう。
構造で重要なのが材積です。当たり前ですが、材積を減らす、つまり面積の小さい部材を利用することでコストを抑えられます。
材積を減らすのは簡単なことではありませんが、大切なのは梁の構造です。梁の架け方を工夫し、梁せいをサイズアップすることで、床の厚みを減らして材積を減らしつつ基準もクリアできます。
ウッドショックを乗り越えるための3つの対策「木材の見直し」「シンプルな構造」「材積を減らす」をすることは工務店経営努力によるところですが、施主にとっては高品質な住宅を建てなければ納得して契約には同意しません。高品質住宅をコストダウンしながら、効率よく建てる方法がMake Houseにはあります。詳しくは以下の無料ホワイトペーパーをダウンロードして、ぜひ御社の工務店経営にお役立てください。
プレカット価格の高騰により、大きな影響を受けた工務店も少なくありません。今後生き残りのためには、木材価格の高騰以外にも次のような対策を考えておきましょう。
木材価格の高騰に対応するには、施主からの合意が必須です。
価格が高騰していることや、調達が難しいため場合によっては木材が変更になることを伝え、あらかじめ合意を得ておきましょう。
説明のないまま工事が始まるとトラブルの原因になるだけでなく、場合によっては工務店側の費用負担増加にもつながります。
林野庁では日本の木材の供給不足を受けて、国産材転換支援緊急対策事業を実施しています。具体的な支援内容は以下の2種類です。
「一時保管緊急支援」では、遠方から木材を運搬する場合に運搬経費・保管場所の支援を受けられます。木材調達が大変になり、運搬や保管にコストがかかってしまった場合に役立つでしょう。
また「転換促進支援」では、国産材に転換させるための設計・施工に関する費用を支援してもらえます。
木材不足による費用増加に悩んでいる場合、ぜひ活用したい制度です。
売上が減少している場合、日本政策金融公庫の活用も検討しましょう。日本政策金融公庫とは、法人・事業主をサポートするための独立行政法人です。
さまざまな貸付がありますが、中でも「経営環境変化対応資金」では、ウッドショックなどの外的要因により売上減少している場合に融資を受けられます。
まずは以下の事業資金相談ダイヤルに連絡してみましょう。
日本政策金融公庫
TEL:0120-154-505
受付時間:平日9〜17時
出典:日本政策金融公庫
今回はプレカット価格の高騰について解説しました。
新型コロナウイルスによる建築需要の増加、さらに輸出コストアップにより、従来のように輸入材に頼ることが難しくなっています。
輸入材の価格は2022年現在も上がり続けています。国産材の割合を増やすだけでなく、供給可能な木材に合わせた設計の見直しも検討していきましょう。