2025年度から、建設業界は大きな転換点を迎えます。国土交通省が発表した新たな取り組みにより、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用した確認申請の試行が始まるのです。
国土交通省は、新築する建築物のほぼすべてが経る確認申請をBIMデータで行うことができるようにすることで、申請・審査の効率化し、さらには共通化されたBIMデータとその伝達手法を業界全体で共有することにより、BIMの活用範囲を広げることを目指しています。
この新しいシステムは、初めは一部の指定確認検査機関に限定されますが、2027年度には全国的な展開が計画されており、住宅業界全体の業務効率化に対する大きな一歩となることでしょう。
この記事では、BIM確認申請の加速化が業界にもたらす変化と、その背景にある技術的詳細について紹介します。
BIMとは「Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」の略であり、コンピューター上に建物と同じ3Dモデルを再現するシステムになります。
従来使われている設計ツールのCADとは違い、はじめから3Dの立体モデルで設計ができる点が特徴として挙げられます。
また、設計から積算・プレゼン・施工管理など建設において必要とされる、多岐にわたる業務を実施できる点もBIMならではです。
BIMについては下記のコラムでも解説をしているので参考にしてみてください。
BIMを活用することで、設計の初期段階から業務負荷を集中させる「フロントローディング」が可能となり、建築物に関するあらゆる情報の可視化と、様々なシミュレーションによる設計内容の検証が行えます。
これにより、迅速に問題点を特定し、改善することが可能となり、結果として設計の質の向上が期待されます。また、スケジュールの前倒しやコスト削減といった副次的な効果も見込まれています。既に複数の事例が公表されており、今後さらにその数は増加すると予想されています。
しかし、確認申請図面の表現には申請者ごとにばらつきがあり、その標準化が課題となっています。また、確認審査に適したBIM閲覧用ソフトウェア(BIMビューアソフトウェア)の整備も必要とされています。
このような背景を踏まえ、国土交通省の建築BIM推進会議は2023年3月、「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」を公表しました。この文書では、「建築BIMの社会実装の加速化」を目指し、「BIMによる建築確認の環境整備」と「データ連携環境の整備」を重要課題として位置づけています。
これに伴い、特定のタスクフォースを新設し、2025年度にはBIM図面審査の開始を目指す方針が示されています。この取り組みは、建築業界におけるBIMの活用と普及を一層促進し、業務の効率化と品質の向上に寄与することが期待されています。
BIMの進展は、住宅業界においても顕著な影響を及ぼしています。2022年のBIM活用推進協議会では、戸建住宅のサンプルモデルが改作され、法的要素の視認機能が強化され、戸建住宅の設計・審査プロセスに特化したBIMビューアソフトウェアの仕様を検討するために行ったものでした。
この改作されたモデルは、建築基準法などの法的要件を視覚的に把握しやすくすることを目的としています。これにより、設計者や審査官が、法規制を遵守した設計が行われているかどうかを迅速かつ正確に判断できるようになります。
さらに、BIMビューアソフトウェアは、これらの要素をより効率的に確認できるよう設計されており、戸建住宅の設計と審査の両方において、作業の効率化と品質の向上が期待されます。
2025年の法改正により、4号特例が縮小され、これまで構造計算が不要だった建築物にも対応が急務となります。コストや社内リソースを抑えつつ、安心・安全な構造を実現する『Make Houseの構造計算サービス』については、以下をご確認ください。
BIMを用いた確認申請は、多くのメリットをもたらします。
最大のメリットは、作業の効率化です。従来の方法では、構造計算書と構造図の整合性を確認する過程に多くの手間と時間がかかっていました。しかし、BIMを用いることで、これらのデータをデジタル形式でやり取りすることが可能となり、これにより作業の効率化が圧倒的に向上するでしょう。
さらに、BIMによる確認申請はペーパーレス化を実現します。従来の紙媒体による情報交換は、セキュリティのリスク、印刷コスト、保管場所の問題など、多くの隠れたコストを伴っていました。建築確認申請には数多くの図面が必要であるため、これらのコストは特に重要です。BIMを使用することで、これらのコストを削減し、より効率的かつ経済的なプロセスが実現されます。
日本におけるBIMの導入は、徐々に進展していますが、まだ多くの課題が残されています。確かに、確認申請におけるBIMの利用事例は増加しており、その導入は着実に進んでいると言えます。しかし、日本でのBIM導入が他国と比較して遅れているのも事実です。
BIMを本格的に導入するには、単に技術的な側面だけでなく、外部機関との連携も重要な要素となります。これには、建築業界全体がBIMの導入に積極的に取り組む姿勢が求められます。また、IT化に伴う効率的で働きやすい環境の実現も、BIM導入の鍵となります。業界全体のデジタルトランスフォーメーションを推進し、さらなる導入を促進することが必要です。
BIM導入における人材育成や継続的な教育も大きな課題です。BIM技術を適切に活用し、最大限の効果を引き出すためには、専門知識と技術スキルを持った人材が不可欠です。したがって、教育機関や業界団体による継続的なトレーニングプログラムの提供が求められます。
さらに、BIM導入のコスト面の課題も無視できません。初期投資としてのソフトウェアの購入や、適切なハードウェアの設備投資が必要となります。これらのコストは、特に中小規模の建築事務所や企業にとって大きな負担となる可能性があります。
BIMのデメリットでもお伝えしましたが、人材育成、教育プログラムの強化、そして経済的な支援は外注化することで負担を軽減することができます。
もちろん、社内にBIM設計ができる方がいるのであれば、対応するのが良いでしょう。しかし、人材がいないのであれば、新たに導入する費用が必要であったり、育成をする時間が必要であったり手間が掛かってしまいます。
特に小規模な事業者の場合、自社でのソフトウェア導入やスキルアップには限界があります。資源の有効活用という観点からも外注化は一つの有効な選択肢と言えるでしょう。
BIMの社会実装に向けて、日本では環境整備が加速度的に進んでいます。効率的な確認申請プロセスの導入、ペーパーレス化によるコスト削減、そして建築業界全体のIT化への動きは、BIMの有効活用を促進しています。
しかし、BIM導入には依然として外部機関との連携強化、人材育成、教育プログラムの拡充、初期投資コストの課題が存在します。これらの課題に対処しつつ、BIMの普及を進めることで、より効率的で、品質の高い建築物の設計と確認が可能となり、さらなる業界の発展が期待されていくでしょう。
2025年の法改正により、4号特例が縮小され、これまで構造計算が不要だった建築物にも対応が急務となります。コストや社内リソースを抑えつつ、安心・安全な構造を実現する『Make Houseの構造計算サービス』については、以下をご確認ください。